プリウスNGなど日本ではセダンの「格」を重視する傾向も
都内でも最近は、地方で人気の高いプレミオ&アリオンのタクシーまで目立ってきた。プレミオのエントリーモデルは199万円なので、LPガスバイフューエルと自動ドアへの改造を行っても、JPNタクシーの廉価モデルよりも、60万円ほど安く済んでしまうという試算もある。
以前、プリウスタクシーが増えたころ、おもに接待が終わったあとの配車要請だとされているが、「プリウスはよこさないでくれ」というオーダーが多く、配車の際にプリウスを外す、“隠しコード”のようなものを作った業者もあった。JPNタクシーも新しいスタイルのタクシーなので、プリウスでのトラウマを意識する事業者も存在するようだ。実際そのようなユーザーの動きもあるようで、馴染みのあるセダン型タクシーがいまだに根強く導入されているという見方もできるだろう。
黒タク(外装色が黒くグレードの高いタクシー)の普及もあり、地域によっては行灯が脱着式となり、貸切などで行灯をはずし、ハイヤーのように利用するニーズもあったりするので、セダン型タクシーをまったくなくすのも難しいようである。
地方に関しては、東京でJPNタクシーへの入れ替えペースが早かったこともあり、程度の良いクラウンセダンやコンフォートのタクシーが中古車として多く流通するようになった。クラウンコンフォートから、中古のクラウンセダンタクシーに入れ替える動きも目立っているので、東京ほど際立ってJPNタクシーが増えることなく、当分はセダン型タクシーが幅を利かせ続けそうである。
現行クラウンが登場したときは、銀行の支店長車など法人ユーザーの入れ替えが進み、先代モデルのハイブリッドの中古車が安く出まわり、ある地域では駅前のタクシーの多くがロイヤルサルーン(ハイブリッド)になったこともあった。また、ハイヤー部門を持っている事業者は、ハイヤーとして一定期間使用した黒塗りのセダンをタクシー車両として二次使用するという動きもある。
つまり、積極的に「セダンでなければ……」ということ以外で、なかなか新車へ入れ替えができない事業者は、タクシーだけでなく、ハイヤー上がりなどの中古車を購入。さらに、新車への入れ替えができるぐらいの体力のある事業者でも、「JPNタクシーはちょっと高いなあ」と考えていると、シエンタだけでなく、カムリやプレミオ&アリオンなどのセダン型の割安感が目に入ってくるといった感じで、いまだにセダン型タクシーが街なかで目立っているともいえるのである。
燃費の良いJPNタクシーの登場もあり、LPガススタンドの相次ぐ廃業が、LPガス仕様にこだわらずにタクシー車両を選ぶ流れを加速させたというのも後押ししているといえるだろう。