ミニバンの特性に合わせるため見えないこだわりが凝縮
こうした問題を解決するため、コーナリングフォースを発生している外輪の撓みを少なくする技術が求められる。タイヤはご存じのようにゴムと繊維の構造で空気を包み込み、荷重を支える構造だ。そのタイヤを撓ませない方法としてはタイヤ外側サイドウォール(側壁)の構造を強化する必要があるが、構造材としてのゴムを厚くしたり、カーカスを厚くしたりするのは重量もコストも増し、乗り心地への影響も大きい。
そこで通常、構造材であるカーカスをビード付近で折り返しフィラー材を包むように畳み込む構造を利用し、折り返したカーカスをタイヤ側壁に上部にまで大きく折り返すハイターンアップという手法が開発される。これで実質側壁のカーカス構造は2重となり強度が増す。部材の増加は最小限で済みコスト増加も抑えられる。さらにフィラー部材も大型化して強化し、側壁の大部分を高剛性化した。ただそのままだと乗り心地に悪影響が出るため、側面上部はシングル構造として撓ませ、荷重の掛かり始めでは意識的に撓ませて衝撃を吸収させている。
またトレッド部分でみれば、もっとも外側の部位となるタイヤショルダー部のラバーコンパウンドを強化し、ブロック剛性も向上させてステアリング操舵時の応答性を高め、操縦性を確保している。左右非対称トレッドパターンとしてトレッド内側は排水やパターンノイズに配慮しつつ、外側は剛性を高める手法としてミニバン用タイヤ技術は確立された。
最近では衝突性能やハイブリッドシステム、大容量バッテリーの搭載などで車両重量は増加の一途をたどり続けており、こうした側壁の強化技術はインサイドにも求められるようになり、タイヤ全体の剛性、縦バネの強化が進んでいる。そのようななかで外側側壁への要求はさらに高まり、アラミッド繊維など新造材への依存度も高まってきているのだ。
こうした技術革新はミニバンと同じく重心の高いSUV車両への展開も可能であり、装着数の高まりを受けてコストメリットも享受されてきている。SUV用としては、さらに全天候性を意識することも必要となりマッド&スノーの全天候タイヤとしての規格をクリアさせることで、商品性をアピールしているものもある。