売れないことは問題じゃない! 話題の「新型フェアレディZ」に課せられた重要な使命とは (2/2ページ)

その名を消さずに残し続けることが大事

 また最近はスポーツカーがあまり話題にならず、新型フェアレディZが新鮮に感じられたこともあるだろう。2019年に現行スープラが復活したときも、それなりに話題になった。

 問題はそのあとで、毎年新しい話題を提供しながら売り続けることが大切だ。2002年に5代目フェアレディZ(Z33型)が発売されたとき、開発者から次のような言葉が聞かれた。「スポーツカーは生産台数が少ないため、フルモデルチェンジを頻繁には行えない。その一方で、技術力の高さ、話題性が大切なカテゴリーだから、1年に1度は何らかの改良やモデル追加を行いたい」。

 この言葉を受けて、フェアレディZは2003年にロードスターの追加、2004年は一部改良、2005年と2006年には特別仕様車の設定、2007年は再び一部改良を行った。2008年に現行型(Z34型)へフルモデルチェンジされ、2010年以降は改良の度合いが少し弱まったが、この流れは今も継続している。

 クルマが日常生活のツールになった今、スポーツカーを大量に売るのは難しいが、イメージリーダーの役割は依然として大きい。時々存在感をアピールすることで、日産のブランドイメージを高く保てる。

 そしてクルマ好きは「いつかフェアレディZに乗りたい」と目標を持つことができる。登録台数が伸びるとか、日産が儲かるといった次元を超えて、世の中のためになる。

 フェアレディZのような商品は、簡単に造ることはできない。情感に訴えるデザインや運転感覚が大切で、さらに伝統やストーリーまで大切な魅力に含まれるからだ。クルマである以上、ノートやデイズにも情感に訴えるクルマ作りやストーリーは大切だが、スポーツカーはその傾向がとくに強い。50年以上の歴史を持つフェアレディZは、まさに貴重な存在だ。新型も大切に育ててほしい。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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