日本人のキメ細やかさがライトウエイトスポーツを好む理由
小さくて、軽くて、キビキビ走れる。ライトウエイトスポーツは、本当に楽しいクルマだ。
代表格はもちろん、マツダ「ロードスター」である。4代目となったNDも発売から早くも5年が経過したが、細かい改良が加わり、さらに走りの質感が上がっている。
ロードスターの開発思想は、言わずと知れた「グラム戦略」だ。広島のマツダ本社内で、各部署の設計者、製造担当者らが、まさに膝詰めの状態で図面を眺めながら「ここをもう少し削れるはずだ」と各部品を1グラム単位で研ぎ澄ましていく。
そんな小さい努力の積み重ねは、ライトウエイト(軽量)スポーツと称される、小型スポーツカーを完成させるためには必然なのだが、そこまで突き詰めるメーカーは少ない。
そうしたことをマツダ社員たちは、面倒な作業、辛い作業とはまったく思っておらず、それどころか「軽量化の苦労はかってでもしたい」という姿勢で仕事に励んできた。そうした作り手の意識が、日本人の職人魂、匠の技に通じる。
作り手の気持ちが、乗り手にもしっかり伝わる。乗り手が、作り手の気持ちを理解することを、走る歓びとして感じ取ることができる。こうした作り手と乗り手、双方の心のキメ細やかさこそ、日本人がライトウエイトスポーツを好む理由なのだと思う。
また、ホンダ「S660」や、スズキ「アルトワークス」なども、軽自動車という枠組みを超えて、広義ではライトウエイトスポーツだと思う。
一方で、海外に目を向けると、最近ライトウエイトスポーツの存在は目立たなくなった。日本で新車が購入できるブランドとしては、英国のロータスやモーガンくらいであろうか。
そもそも、ライトウエイトスポーツは英国の、いわゆるバックヤードビルダーが中心となって徐々に普及していったカテゴリーだ。
ロードスターも、初代NAの開発メンバーが英国ライトウエイトスポーツを意識して商品企画している。
やはり、日本人と英国人、モノづくりの感覚や感性が似ているのかもしれない。
先日、マクラーレン日本法人の代表とじっくり話をする機会があったが、日本人とマクラーレン量産車との相性が良いのは「日本人が英国文化に親しみやすいから」という点で考えが同じだった。
この時は、「720S」と「720スパイダー」の長距離インプレッションだった。車体全体の大きさ、デザイン、価格はまったく違うのだが、どこかマツダロードスターと通じるものを感じた。
それは、ライトウエイトスポーツに対するモノづくり精神である。