軽ホットハッチカテゴリーの始祖やクルマの原点と呼べるモデルも
ダイハツ工業株式会社(ダイハツ)は、2020年9月生産分実績をもって、ダイハツブランド車両の国内生産累計台数が3000万台に達したことを発表した。日本の自動車メーカーとしてはもっとも古く、1907年に産学共同で生まれた発動機製造株式会社にルーツを持つのがダイハツ。現在の社名が「大阪にある発動機製造」から生まれた愛称であることもよく知られているし、1931年に最初に生み出した三輪自動車には、まさしく「ダイハツ号」という名前がつけられた。
戦後、自動車製造に返り咲き、記念すべき最初のモデルは映画『ALWAYS三丁目の夕日』の劇中車として印象的だった三輪トラックの「ミゼット号(1957年)」。さらに1960年には初の軽自動車として商用車の「ハイゼット」を生み出している。けっして派手なモデルは多くないが、日常の生活や仕事を支えるスモールカーを生産してきたのがダイハツだ。そんな3000万台の歴史から、個人的に記憶に残る5つのモデルを紹介しよう。
1)ミラ・ターボTR-XX
まず忘れられないのが1985年に生まれた軽ホットハッチ「ミラ・ターボTR-XX(L70型)」。2代目ミラのスペシャルなスポーツバージョンとして生まれた“TR-XX”はターボエンジンとエアロパーツをまとったボディという、その後の軽ホットハッチ・ブームを生み出すことになった。550ccエンジンの最高出力は52馬力と、のちにスズキから登場するアルトワークスと比べると見劣りするが、このカテゴリーを生んだ存在として記憶に残る。
さらに、この当時のミラはフロント・ストラット、リヤ・セミトレという4輪独立懸架のサスペンションで、ハンドリングの面でもこだわりがあった。その究極形といえるのが、1994年に生まれた最後のミラ・ターボTR-XX(L502型)で、リヤにパッシブ4WSを採用したことによるオン・ザ・レール感あふれる走りはダイハツの軽自動車史上で最高の出来映えだったと記憶している。
2)ミゼットII
つづいてピックアップするのが1996年に、アンダー軽自動車サイズの軽トラックとして誕生した「ミゼットII」。当初は一人乗りの4速MTしか設定がなかった(のちに2人乗り・3速ATが追加)が、キャブレター仕様のエンジン、四輪ドラムブレーキといったメカニズムがとにかくシンプルでプリミティブな作りが魅力のクルマと記憶している。
実際、このミゼットIIには数年ほどオーナーとして日々の生活を共にしていたが、基本的に空荷で乗っていたこともあり、ブレーキングでリヤがブレイクしやすく、またダイレクト感のあるハンドリングは公道を走ることのできるゴーカートのような面白味があった。こんなクルマの原点のようなモデルが、1990年代に存在していたことが奇跡だ。