「エコ」を全面に押し出す施策が「間違い」! 日本で「EV&PHV」を盛り上げるために重要なこととは (2/2ページ)

次世代のクルマであるというワクワク感を演出してほしい

 タイの首都バンコクでは、高級ショッピングモールの駐車場の店内入口近くに充電施設付きの駐車枠があり、そこに富裕層が高級BEVやPHEVを停めて充電している間にショッピングするのがトレンドとのこと。BEV先進国の中国でも、一般的な実用志向のBEV(中国メーカー製)はライドシェアで使われていることが目立ち、個人所有としてはポルシェ・カイエンや、レンジローバーなど、欧州高級ブランドのPHEVやテスラなどが街なかで目立っている。

 中国で改革開放経済をスタートさせるとき、当時の指導者である鄧小平氏は、「先に富めるものから富め」との“先富論”を説いた。そしていまの世界的なBEVの普及は、「富めるもの(余裕のあるもの)から保有しろ」といった印象を強く受ける。BEVやPHEVは一般的なガソリン車などと比べれば、明らかに車両価格は高い。まずは、富裕層に積極的にテスラなどの先進的で格好いいBEVを街なかで乗ってもらい、一般消費者が「お洒落だなあ」と思うようになり、価格設定が割安になったころには、自然な流れで一般消費者にもBEVに乗ってもらおうというように見えるし、そのような話をして否定するひとも少ない。

 日本はいきなり、「地球環境にやさしい」とか、「災害時に役に立つ」などを全面に打ち出している点で普及を鈍らせているように見える。BEVならではの、今までの内燃機関車と比べ、何が新しく、そしてどこか面白いのかなど、クルマ本来の魅力というものがあまりにもアピールされていない。それどころか、“動かせる蓄電池”のようなイメージが先行してしまっているのも、消費者の注目を浴びない一因となっている。

「とにかくまず乗ってもらおう」と考えるのならば、やはり“格好いい”とか、“お洒落”、“先進的”など、感情面に強くアプローチできるモデルを国内でもラインアップしていかなければ、それ以外の方法で本格普及させるには政策的なもの(内燃機関車販売禁止など)がなければ、遠い道のりになるだろう。

 ただ、日本国内では節電の徹底などもあり、余剰電力(電気が余っているということ)が目立っている。電力会社のなかにはBEVの普及促進を図り、余剰電力を減らしたいと、ここのところ路線バスやタクシーなど公共交通機関も含め、BEVの社会的普及に注目しているという話も聞くので、今後は普及に弾みがつく可能性も高い。日本でHEVがここまで普及したのは、HEV専用車として先進性を強くアピールしたプリウスというクルマがあったからこそだったのを、いま一度思い出してもらいたい。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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