しっかりと直せるショップを見つけることが大切
ほかにも360cc時代の軽自動車としてはスズキのフロンテクーペ、ダイハツのフェローマックス、三菱ミニカなど日本のモータリゼーション初期を彩った名車が数多く登場しています。ただし、いずれも残存している個体は非常に少なくなっているのも事実です。
当時の製造技術や素材などから錆などで傷んでしまうことも多いですし、高度経済成長期にどんどん廃車になっていったという事情もあります。ですから中古車を探すにもひと苦労。通常のオークション経由で見つかることは稀ですし、個人売買も視野に入れて探す必要があります。はっきり言って、いくつかの個体を見比べて程度のいいものを手に入れるというより、一期一会の出会いを大事にして見つけたら入手するくらいの気持ちでなければ、360時代の軽自動車を所有することは難しいといえます。
というわけですから、相場観もなにもあったものではないのですが、おおよその予算感でいえば、車体100万円、レストア費用100万円で合計200万円くらいのイメージで考えておくといいかもしれません。もちろん、いい個体に出会えればもっと予算を抑えることはできるでしょうが、まったく修理費を考慮しないで購入するというのはあまりにも無謀といえます。なにかあっても動じず、しっかり治す(それだけの予算を確保しておく)という心構えが、この時代の軽自動車と付き合うための心得としては大前提と言えるでしょう。
その際に重要なのは、しっかり直せるショップやメカニックを見つけておくこと。正規ディーラーに持ち込んでも、ちゃんと対応できることのほうがレアで、通常であればやんわりと断られるでしょうし、街の修理工場であっても対応は難しいことのほうが多いと考えるべきです。この手のクルマに慣れた専門ショップとのツテがないまま、個人売買で入手しても、自分自身にメンテナンスなどの高いスキルがなければ結局のところ不動車になってしまいます。それでは、せっかく半世紀以上も生き残ってきたクルマたちがあまりにも不憫です。
資本主義ですからお金を出して買ったオーナーの自由なのですが、この手のクルマに乗るのであれば「歴史的遺産を預かっている」くらいの気持ちで、しっかりとメンテナンスやレストアができる人が持つべきです。かわいいから、ちょっと乗ってみたいという気持ちで入手してしまうとヤケドしてしまうかもしれません。
実際、所有せずとも自動車系の博物館などや旧車のイベントに行けば、360cc時代の軽自動車を間近で見ることは可能です。もし本気で欲しいと思うのであれば、旧車系イベントでオーナーの方に入手方法や維持の仕方などを伺って、それでも大丈夫という覚悟を決めてから、その道に進んでほしいと思います。そうしてしっかりと準備をすれば、意外に日常的に乗れるのも、360cc時代の軽自動車の魅力だったりするのです。