自動車のワンオフ製作から各種デザインまで手掛ける
カロッツェリアとはイタリア語で、モーターショーのコンセプトカーやスーパーカーの解説などでよく目にする言葉だ。もともとは馬車のボディを作る工房のことで、それがそのままクルマのボディを作るようになった。初期の自動車というのは、とくに欧州ではいわゆるベアシャシーのみを作って、ボディは好みに合わせて作るというのが普通だった。クルマが買えるのは貴族だったりするので予算はあるし、また自動車メーカーもボディを作るまでは手が回らなかったというのもあるだろう。
アメリカでのT型フォードの大量生産の影響は世界に広まり、欧州でもワンオフのボディ製作というのは減る傾向にあった。戦後1960年代ぐらいからカロッツェリアは、ボディそのものの製作からデザイン製作に移行。ピニンファリーナやベルトーネ、イタルデザインなど、巨匠的なデザイナーが率いる新興勢力の活躍も目立つようになった。1980年代から1990年代あたりが全盛期で、日本メーカーも公にはしていないものの、デザインや全体的なコンサルタントを依頼していたこともある。
またイタリアに行くとわかるが、ボディ製作から派生したという点で町の板金屋もカロッツェリアと呼ぶし、ベルトーネなどは組み立て自体も請け負っていて、デザイン集団だけでないため、裾野の広い言葉ではある。
ただ最近は自動車メーカーが自社内でのデザインに力を入れ始めていることから、カロッツェリアへの依頼がかなり減っていて、倒産したり、吸収されたりすることも増えてきた。そもそもイタリアンデザインと言っても、所属のデザイナーでイタリア人はかなり少なくなってきている。実際、ピニンファリーナはインドの自動車メーカー、マヒンドラグループの傘下だし、ジウジアーロ率いるイタルデザインもフォルクスワーゲン傘下である。
業務にも変化があって、ピニンファリーナは創成期のように、フェラーリなどをベースにしたワンオフモデルの作成を近年始めている。いずれにしても、イタリアンデザインを武器にして「デザインを売る」という時代ではなくなり、相当な曲がり角に来ているのは確かだ。