日本に負けじと百花繚乱! 多様化が進む「世界のタクシー」車種事情 (2/2ページ)

アメリカでは車両は多様化しているが基本はハイブリッドだ

4)ホーチミン(ベトナム)

 地元では旧地名となる“サイゴン”が愛称のようによく使われているのがホーチミン。この都市でのタクシー車両のメインは、トヨタのイノーバという中型MPVとなる。

 最大手の“ヴィナサン”というタクシー会社の車両はシートカバーが全面にかけられ、運転士も制服を着て親切な対応をしてくれ、その様子は日本並みかそれ以上であった。ほかの事業者でもイノーバばかりであった。イノーバは東南アジアでは企業の社用車などでもひんぱんに使われている。

5)台北(台湾)

 筆者が十数年ぶりに台北を訪れた数年前、タクシー車両といえばトヨタ・ウィッシュばかりであった。一般ドライバーの間でもウィッシュが好まれて乗られており、台湾は“世界でもっともウィッシュを愛する地域”とまで言われていた。その後すぐに台湾でのKD(ノックダウン)生産が終了すると、タクシー車両も急速に多様化が進んだ。

 そのなかでウィッシュの後継モデルといってもいいほど存在感を見せたのがシエンタ。台湾だけでなく、タイやインドネシアでも大ヒットしている様子を目の当たりにしているが、タクシーとしてシエンタを見かけるのは台北が初めてであった。ほかにも日産シルフィやホンダ・ヴェゼルなど、とにかく多種多様となっているのが、いまの台北のタクシーの特徴である。

6)ニューヨーク(アメリカ)

 かつてのニューヨークのイエローキャブといえば、チェッカーブランドの専用車があったが、その後は“パトカーのおさがり”ともされている、アメリカンブランドのフルサイズセダンとなっていた。

 さらにそののち、フルサイズセダンが事実上消滅すると、トヨタ・プリウスとなり、いまではタクシー組合の“推奨車種”から選ぶことになる。ラインアップのメインはハイブリッドとなり、圧倒的にカムリハイブリッドが走っている。

 そのほかにはトヨタRAV4 ハイブリッドや日産アルティマハイブリッドなども目立っている(アメリカンブランドも推奨車種には入っているが、多くは日系モデルとなっている)。ハイブリッド以外では日産NV、トヨタ・シエナ(ミニバン)なども走っている。プリウスではプリウスV(日本名α)が圧倒的に多い。一時期日産のNVで一本化するという話がまとまったが、フォードが強力なロビー活動を行った結果ともされているが、それがひっくり返される形となり、いまに至っている。

 ニューヨークでタクシーとして使われたハイブリッド車(おもにプリウスやカムリ)が、全米各地でタクシーとして“再利用”されるというパターンも多いようで、ロサンゼルスなど沿岸都市だけでなく、内陸の主要都市でもハイブリッドタクシーが目立ってきている。

 ちなみにシカゴではカムリタクシーが圧倒的に多くなっている。ロサンゼルスでは3代目プリウスのタクシーがメインで活躍する。ロサンゼルスで聞いた限りは、プリウスに対して「タクシーで使っているから嫌だ」という意見がある一方で、「タクシーで使われるほど耐久性があるので好感が持てる」とする意見があり分かれているようだ。

 フルサイズセダンはV8エンジンを搭載していることもあり、ガソリン代がかなりかかっていたが、ハイブリッド車になると単純に排気量も半分以下になることもあり、飛躍的に燃料代がセーブできるようになったとドライバーから聞いたことがある。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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