価格設定でライバル車との競争力を高める
そして国内のトヨタはミニバンの保有台数が多く、SUVへの乗り替えも期待される。子育て時期にミニバンを購入しても、子供が成長すれば、3列シートは不要だ。ほかのカテゴリーを探すが、ミニバンに慣れると、天井の低いセダンやワゴンは窮屈に感じられて乗り替えにくい。ルーミーのような天井の高いコンパクトカーなら窮屈ではないが、走りや質感が物足りない。
そこでSUVに目が向く。1/2列目はミニバンと同等に快適で、荷室も相応に広い。しかも外観がカッコ良くて運転感覚はミニバンよりも楽しい。そのために近年では、日本でもSUVの売れ行きが増加傾向だ。2000年頃のSUVは、新車として売られる小型/普通車の6%前後だったが、今は20%以上を占めるミニバンと並ぶ人気のカテゴリーになった。そこでいよいよトヨタが本格的に乗り込んできた。
ヤリスクロスの価格がヴェゼルやキックスに比べて18万円ほど安い背景にも、トヨタのSUVラインアップに基づく事情がある。ライバル車との競争力を高め、なおかつ身内同士の喰い合いを防ぐことも視野に入れた。具体的にはトヨタのコンパクトSUVの価格(2WD)は、ライズZが206万円、ヤリスクロスZは221万円、C-HR・S-Tは241万5000円だ。価格が重複せずに並ぶ。仮にヤリスクロスZがライバル車と同様に18万円高ければ、239万円になってC-HR・S-Tと比べた時に割高感が生じてしまう。
このように複数の理由に基づいて、トヨタは短期間でSUV軍団を整備している。その内容は以下の通りで、ライバルメーカーが入り込む余地を与えない。
トヨタSUVのラインアップ