SUVは世界的に売れ筋カテゴリーとなった
最近のトヨタは、SUVの新型車を積極的に投入している。2016年の末にC-HR、2019年にはRAV4とライズ、2020年にはハリアーとヤリスクロスだ。この内、ハリアーは従来から用意されていたが、それ以外の4車種は新規投入になる。RAV4は正確には復活だが、中断期間も長く、実質的に新規投入だ。
トヨタがSUVに執着する背景には、複数の理由がある。
筆頭はSUVが日本だけでなく、世界的な売れ筋カテゴリーになったことだ。もともと日本は特殊な市場といわれ、海外では売りにくい軽自動車とミニバンが人気を得ていた。国内と海外の両方で堅調に売れるカテゴリーは、以前はコンパクトカーに限られた。ところが今はSUVが加わり、国内と海外で好調に売れるから効率が優れている。先代ハリアーは、海外では積極的に売らなかったが、新型はヴェンザとして北米でも扱う。
2つ目の理由は、トヨタの慎重な開発姿勢だ。前輪駆動やミニバンの普及期も同様だったが、他社の動向を慎重に分析した上で、売れ行きが伸びると判断すれば車種を一気に増やす。そして市場を牛耳ってしまう。
トヨタは悪路向けのランドクルーザーを1951年から手掛け(当時の車名はトヨタジープ)、SUV開発のキャリアは長いが、前輪駆動のシティ派SUVには慎重に取り組んできた。その車種数を本格的に拡充させている。
SUVが車種を増やしやすいカテゴリーであることも影響を与えた。たとえばハリアーとRAV4は、同じエンジンを搭載して、プラットフォームもホイールベース(前輪と後輪の間隔)の寸法まで含めて共通だ。それでもハリアーはシティ派、RAV4は前輪駆動ベースながら悪路走破も視野に入れたラフロード派として、異なる性格とデザインに仕上げられている。基本部分を共通化して開発コストを抑えながら、大量な販売をねらえるために効率が良い。
インプレッサスポーツから派生したXVを見てもわかるとおり、SUVはいろいろなパターンに基づいて開発できる。セダンやワゴンに比べると、商品開発に多用途性があり、融通や応用も利かせやすい。