レーシングドライバーでも目隠しされたらわからない製品精度! GRヤリス「生産の秘密」とは (2/2ページ)

10台のバラツキテストでは驚きの感触!

 そんな豊田社長の想いが13年のときを経て実現したのである。齋藤さんは、「社長がGRヤリスのチーフエンジニアでありマスターテストドライバーです。初期段階からテストに参加してもらい、毎週のように乗ってもらいました。ほかのドライバーも気付かないようなことも指摘、データを解析するとハッと気づかされることばかり。クルマは着実に進化していきました」と語っている。

 そんなGRヤリスはどのように生産されるのか? GRファクトリーはレーシングカーと同じような高精度・高バランスを実現できる専用工場だと言う。一番の特徴はベルトコンベアを用いたライン生産ではなくセル生産方式を採用している事だ。元々セル生産方式は少人数、もしくは一人で製品を完成させる作業形態だが、GRファクトリーはこれらの工程を分割してそれぞれの工程の間をAGV(無人搬送車両)で繋ぐ。

 これにより「高精度組み立て」と「量産」を融合している。組み付けはトヨタの各工場から集められた精鋭が担当するが、ボディ、サスペンション、アライメントなどなど、正確な位置決めをするためのさまざまな工夫が見られる。ちなみに開発ドライバーを務めた石浦宏明/大嶋和也選手は「性能のためにかなり細かい要求をしましたが、シッカリ製品になっているのは皆さんの努力の結果です」、「試作車10台のばらつき試験をしたが、我々でも『クルマを変えた』といわれなければわからないレベル」とバラつきのなさに驚いたそうだ。

 ただ、ここまで聞くと「社長肝いりプロジェクトだから採算度外視でしょ?」と思う人もいるかもしれないが、ハッキリ言わせていただくが社長はそんな甘くない(笑)。

 社会情勢や景気に左右されないスポーツカービジネスを行なうには、ビジネスとして成り立たせること。GRファクトリーも当然、黒字運営できるように設計されている。齋藤さんは「少量生産でもコストを上げない、その実現のための特効薬はありません、とにかく『現地現物』と『TPS(トヨタ生産方式)』を愚直にやることでした」と語る。GRファクトリーはズバリ、大量生産が得意なトヨタの少量生産への挑戦である。


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