ホンダのブランドイメージは「小さな自動車のメーカー」となった
また初代N-BOXの売れ方も好ましかった。逆説めいた表現だが、一気に販売トップに登り詰めなかったからだ。N-BOXが国内販売の1位になったのは2017年以降で、それまでは1位でも軽自動車市場に限られていた。小型/普通車を含めた総合1位は、トヨタ・プリウスやトヨタ・アクアであった。
さらに2012年の軽自動車販売1位はダイハツ・ミラ&ミライースで、2014年もタントに1位を奪われている(2014年のタントは国内販売の総合1位)。ライバル車と競争しながら着実に売れ行きを伸ばした車種は、発売直後に強いインパクトで華々しく1位になった車種に比べると、その後の売れ行きが下がりにくい。
一般的にクルマの売れ行きは発売から時間を経過すると下がっていくが、先代N-BOXの届け出台数は、2012年が21万1155台、2013年には23万4994台に増えた。そして2014年には、先代タントが登場した影響で17万9930台に下がる挫折も経験している。2015年以降は再び18万台を超えた。
販売の上下動を繰り返しながら、市場へ着実に浸透していく。息の長い人気車になるには、この過程が非常に大切だ。初代スズキ・ワゴンR、タント、トヨタ・エスティマ、プリウスなど、時代を築いたクルマはすべて同様の売れ方を経験している。
このほかN-BOXが小型車の多いホンダの商品だったことも影響した。フィット、フリード、ステップワゴンなど、ダウンサイジングしてN-BOXに乗り替えるユーザーが豊富にいるからだ。
そのために2019年には、国内で売られたホンダ車の35%をN-BOXが占めた。軽自動車全体になると51%に達する。そこにフィットとフリードの台数も加えると、国内で売られるホンダ車の75%前後に達してしまう。
2019年のホンダの国内販売総数は72万台を超えたので、軽自動車の好調によって2010年に比べて7万台以上増えたが、小型/普通車は36万台弱だから約13万台減った。N-BOXは優れた商品で好調に売れて当然だが、この影響でホンダの国内販売はバランスを崩し、ブランドイメージも「小さな自動車のメーカー」になった。
軽自動車の販売比率が増えると、軽自動車関連の税金がいま以上に高まるなど、ユーザーに不利益が生じることも心配される。今後はN-ONEのフルモデルチェンジも控えるが、軽自動車を守るために、ホンダは小型/普通車に力を注ぐべきだ。