ラジコンカーに細工してみるとその効果は大!
N1カテゴリーは市販車が装備する電子制御であれば、ABSやトラクションコントロールなども使える。そこでECU(電子制御コンピュータユニット)をチューニングして駆動内輪にだけブレーキをかけるプログラム開発を三菱自のエンジニアに提案したのだ。だが言葉で説明してもなかなか理解が得られず、当時タミヤ製のラジコンカーにコーナリング中に内輪だけブレーキがかかるように細工してデモンストレーションして見せた。その効果は抜群で、曲がりにくかったラジコンカーが高速で一気にスピンターンするように曲がったのだ。
しかし、三菱はGTOではGT-Rの速さに勝てないと考えていて、ランエボへのスイッチに舵を切る。後にランエボはS-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)を構築し、4輪駆動でも曲がる特性を引き出すことに成功した。だがここでの主役はACD(アクティブ・センター・デファレンシャル)とリアアクスルのAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)の制御によるもので、4輪ブレーキの個別積極的活用にはまだ発展していなかった。
僕は駆動輪の内輪にブレーキをかける仕組みをどうしても実践したく、三菱がだめなら他社ででもと、H社の研究所に打診した。研究所で面談したエンジニアにラジコンカーを見せ現象は理解してもらえたが、彼の計算によるとデフの作用では回転数が移動するだけでトルク移動は起こらない。だから実車では効果がないだろうと、このプランは却下されてしまったのだ。思うにエンジニア氏は「アクセルオンで駆動トルクを掛けながら……」という視点を見落としていたとのではないかと思う。後の2004年になってBARホンダF1マシンが駆動輪ではないフロントにアクスルデフを装備して内輪差を油圧制御するというシステムを開発したのを見て「やられた!」と思ったものだ。