「ステランティス」はFCAとPSAが合併して生まれた
日本のユーザーの多くは、未だに「ステランティス」という自動車メーカーの名前を聞いたことがないはずだ。なんだか、中国のベンチャー企業のようなイメージもあるが、じつはPSAとFCAが2020年7月に発表した新会社である。
2019年の世界販売台数で見ると、ステランティスは約870万台に達する計算になる。これは、独フォルクスワーゲングループ、トヨタグループ、そしてルノー日産三菱アライアンスに次ぐ、世界第四位の規模だ。
自動車産業は近年、CASE(コネクティビティ、自動運転、シェアリングなどの新サービス、電動化)などの影響による「100年に一度の大変革期」を迎えていることは、周知の事実だ。
そうしたなかで、技術や販売地域での得意分野を互いに分かち合い、またプラットフォームやパワートレインの共通化による量産効果を狙うため、大手自動車メーカーは関連企業のグループ化や、同業他社との協業(アライアンス)、または合併というプロセスを踏んできた。
ステランティスも、そうした時代変化への対応策として生まれた。ステランティスを構成する、旧FCAと旧PSA、それぞれについて見ていきたい。なぜならば、ブランドとしてはこれまでの体系を継承する可能性が高いからだ。
まず、FCAはイタリアのフィアットと、アメリカのクライスラーが合併したもの。きっかけは、2008年のリーマンショックだ。クライスラーは事実上、破綻してしまい、投資企業などから再建計画を提示された後、最終的にフィアットと手を結んだ。クライスラーではジープが稼ぎ頭であり、フィアットはフェラーリ、マセラッティ、アルファロメオ、アバルトなど個性的なブランドで構成されている。
一方、PSAはプジョーが1976年にシトロエンを傘下に収めたことが始まりだ。シトロエンは個性的なデザインや革新的な技術を特長としてきたが、70年代以降は時流に乗れない時代が長らく続いた。それが2010年代に入りPSAとして、ブランドの多角化とブランドの在り方を再構築したことで、シトロエンはブランドとして一気に再生された。また、プジョーの上級ブランド「DS」や、米ゼネラルモーターズから英国ヴォクソールを譲り受けた。
このように、ステランティスには庶民派から超高級まで多彩なモデルラインアップが取り揃ったことで、VW、アウディ、ポルシェ、セアト、シュコダ、ランボルギーニ、ベントレーを展開するフォルクスワーゲングループと、欧州市場をメインに世界各地で十分に渡り合える体制になったといえる。