所有から共同利用の時代へと変わっても走りの機会の提供は重要
もちろんこの先も、買ってもらうことを目指すことに変わりはなくても、EVや自動運転、共同利用が移動の中心になった社会でも、ポルシェに乗ってみたいと思い、ポルシェを選んでもらえるための準備をしているのだ。そのエクスペリエンスセンターの姿は、あたかも乗馬クラブのような場であるといえそうだ。
いまから135年前、カール・ベンツによってガソリンエンジン自動車が発明され、20世紀に入りヘンリー・フォードがT型を量産して以降、馬や馬車が交通の手段から消えていった。しかし、乗馬や競馬は、馬を使った娯楽として今日も生き続けている。
クルマが、所有から共同利用へ替わっていったときも、エクスペリエンスセンターへ行けば運転の喜びを味わえる。それが、ポルシェの狙いだろう。
では、ほかの自動車メーカーは生き残れるのか。安全なクルマとしてスウェーデンのボルボは共同利用となっても、選ばれるブランドとして残るかもしれない。たとえば、自動運転のボルボでエクスペリエンスセンターへ行き、ポルシェの醍醐味を満喫し、シャワーを浴び、一杯呑んでから、帰りはまた自動運転のボルボにゆだねれば安心して帰宅できる……。
そのような時代が、10年後あたりからやってくるだろう。単に販売店で新車に触れるだけでなく、さまざまな場で消費者がブランドと接点を持てることが、世界の自動車メーカーにとって生き残ることにつながっていく。さもなければ、自動運転車両のための安くて丈夫なプラットフォームメーカーになるだけかもしれない。