基本となる走りを熟成させたモデルが増えることを願う
さまざまな軽自動車を試乗テストして気になるのは、後方からの衝突安全性よりむしろ操安性(操縦安定性)のほうだ。軽自動車は小さくコンパクトなことと、安価なことが魅力となっている。とはいえ装備や質感を高めるなど車格を追求していくと、普通車と同じくらい開発コストがかかってくる。ホンダN-BOXはホンダが起死回生の策として、シビックやフィットのユーザーすら取り込もうという気概で開発されている。従来の軽自動車とは一線を画す質感と走り、装備を備えていることが試乗してすぐにわかった。軽自動車も選択肢に入るなら、検討すべきモデルは溢れている。
しかし、N-BOXの操安レベルで比較できる車種はほかに存在しないことがわかった。やはりコスト削減のなかで、最初に削られるのが操安性に関する部分というのが大方のメーカーの方策だったのだ。サスペンションを構成するショックアブソーバーやブッシュはコストダウンされ、スタビライザーはそのものを省いてしまっているモデルも多く存在する。
加えてもっとも安価な仕様のタイヤを装着させ、走行試験にも重きを置かない。その結果、動力性能は自主規制の64馬力に仕上がっても、高速で走るとフラフラして危ない、横風に弱い、路面の轍やアンジュレーション(うねり)でハンドルを取られるなど操縦性に難のあるモデルがじつに多い。ホンダN-BOXですら、二代目へと進化した現行モデルは、操縦性に難を感じるようになってしまった。軽自動車として価格を低く抑えなければ売れない。その為に目立たないようにコストダウンされた一面が、走りに悪影響を与えてしまうこともあるのだ。
軽自動車は「小さくて危険」なのではなく、じつは「操縦性を重要視していなさすぎて危険」なモデルの多いことが課題になっていると考えるべきなのだ。軽自動車メーカー各社はそのことを認識し、操縦安定性が高く、走りにも満足できる軽カーとして魅力を高めていってもらいたい。