ヤリスは1リッターエンジン搭載車が好調
このライズと激しい1位争いを展開するヤリスの人気も根強い。全長が4m以内に収まる5ナンバー車で、内装の質を高めた。衝突被害軽減ブレーキは、右折時に直進してくる対向車、横断歩道上の歩行者を検知して作動する。ハイブリッドGのWLTCモード燃費も35.8km/Lと優秀だ。高い関心の寄せられる安全性と、環境/燃費性能に磨きを掛けた。
エンジンは設計の新しい直列3気筒1.5リッターのノーマルタイプとハイブリッドを主力にするが、従来型のヴィッツと同じ1リッターも用意した。1リッターの価格は1.5リッターに比べて15万円ほど安く、もっとも安価なX・Bパッケージは140万円以下だ。1リッターエンジン車は、低価格を重視する法人ユーザー、レンタカー、カーシェアリングなどには使いやすい。さまざまな需要がヤリスを支えている。
トヨタの販売店では「1リッターエンジン車のお客さまは、法人だけではない。一般のお客さまも購入されている。価格が安く、自動車税でも有利(1.5リッターに比べて年額5000円安い)になり、しかもヤリスの安全装備は今の1リッターエンジン車ではもっとも進んでいるからだ」という。つまりヤリスはハイブリッドを含めて3種類のエンジンをそろえ、価格帯の幅が広いことも好調に売れる理由だ。
このほかヤリスの前身となるヴィッツの発売は2010年、アクアも2011年と古い。立体駐車場を使えるコンパクトカーの乗り替え需要が、久々の新型車となるヤリスに集まった影響もある。
2020年5月にトヨタの販売体制が刷新されたことも、ヤリスの販売では有利になった。全国的にトヨタ4系列の全店がトヨタの全車を扱うようになり、ネッツトヨタ店の専売だったヤリスは販売店舗数を大幅に増やした。従来の約1500店舗から4600店舗に急増している。どこのトヨタの販売店でも買えるようになると、人気車は売れ行きをさらに伸ばす。その半面、不人気車は従来以上に売りにくくなる。
以上のようにヤリスは、安心して使える実用的で買い得なコンパクトカーとして人気を高めた。ライズはクルマ好きの気持ちに応える楽しい等身大のSUVとして好調に売れている。
この2車種は、ちょうど夫婦のように、互いに補完しながら国内市場を盛り上げている。そこに今後ヤリスクロスが加わると、どのような相乗効果をもたらすのか。やはり日本のカーライフを元気にするのは、コンパクトなクルマたちだ。ほかのメーカーも頑張って、トヨタが独占する販売上位を切り崩してほしい。