世界にハイブリッドを広めた偉大なクルマ
日本どころか世界にハイブリッドカーを認識させ、広め、現在の電動化の波を作り上げたクルマがトヨタ・プリウスだ。卓越した燃費性能を誇り、その後のエコカーブームに火を付けた立役者でもある。そんなプリウスもすでに4代目となり、派生モデルも登場している。プリウスについて詳細を紹介しよう。
■プリウスとはどんな車?
トヨタ・プリウスは、まだハイブリッドカーという言葉すら誰も知らなかったエンジン車が全盛の時代にデビューしたハイブリッド専用車だ。その印象は鮮烈で、その後あっという間に世界的なハイブリッドカーのブームを呼んだ。すでに発売から20年以上が経過し、4代目が販売されているが、今でもハイブリッド車といえばプリウスと考える人は多いだろう。
そんなプリウスの特徴は、燃費自体が優れるエンジンに、THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)と呼ばれるハイブリッド機構を組み合わせたパワートレインだ。THSは2つのモーターを持ち、エンジンとモーターの力を組み合わせて使用できるほか、同時に発電を行うことができる。燃費は歴代モデルすべてにおいて、通常の量産車では世界最高レベルだ。
モデルチェンジを行うたびにサイズは大きくなっているものの、その時代の日本にマッチしたボディの大きさで、現代の国民車といっても過言ではないクルマである。
■プリウスはどんな人に向いている?
・年間の走行距離が多いひと
トヨタ・プリウス最大のウリはなんといっても燃費性能だ。どんな使い方をしても圧倒的な燃費数値を叩き出し、またガソリンもレギュラーを使用するためにお財布にやさしい。なので年間走行距離が多いひとはプリウスを選ぶことで、ランニングコストを押さえることが可能だ。回生ブレーキがあるためにブレーキパッドが減りにくいなど、燃費以外にもコスト面で有利になることが多い。
・長距離移動が多いひと
これも上記の燃費に関することだが、燃費がいいということは、ガソリン満タン時からの航続距離が長いということでもある。うまく乗れば1000km以上走ることも可能なのだ。これは出先でガソリンスタンドを探す手間もなく、常に自分のペースで走れるためにストレスを減らしてくれる。よって長距離の移動が多いひとにはうってつけのクルマだといえる。
・早朝や夜間にクルマを使用するひと
現在のプリウスはEVモードが付いており、条件が整ったときにはモーターのみで走行することが可能だ。それゆえ住宅密集地で、早朝や夜間にクルマを使うとき、エンジンを掛けずに移動できるため、近所迷惑にならずに済む。万が一バッテリーの残量が少なくてエンジンが掛かっても激しい加速などをしなければ、エンジン回転が低い領域で走行できるため、やはりエンジン車よりも静粛性は高い。
■プリウスの歴代の振り返り
1997年 初代
1995年に開催された第31回のモーターショーでプリウスという名のコンセプトカーが登場。その後1997年に同名のハイブリッドカーが発売された。なんといっても有名なのはキャッチコピーで「21世紀に間に合いました」という言葉が印象に残っている人は多いだろう。初代プリウスは世界初の量産ハイブリッド車という偉業を成し遂げた。
現在と違い、ボディは4ドアセダンタイプを採用し、発売当初のボディサイズは全長4275mm×1695mm×1490mm。搭載されたエンジンは1.5Lで、58馬力/10.4kg-mを発生していた。2000年にはマイナーチェンジが行われ、全長が4310mmに。エンジンとモーターの出力向上も図られ、エンジンは72馬力/11.7kg-mとなった。
ハイブリッドシステムはTHSを採用し、バッテリーはニッケル水素。燃費は10・15モードで発売当時が28.0km/L、2000年の変更で29.0km/L、2002年には31km/Lに達している。
2003年 2代目
ボディ形式をガラリと変え、セダンから5ドアハッチに生まれ変わった2代目。搭載されるハイブリッドシステムはTHS2と呼ばれる新世代ハイブリッドシステムになった。
ボディサイズは全長が+135mmの4445mm、全幅が+30mmの1725mm、全高は1490mmと変わらず、全体として安定感のあるスタイリングに変更されている。
エンジン排気量は変わらずの1.5リッターだが、モーターもエンジンも出力は向上。モーターは初代の45馬力/35.7kg-mから68馬力/40.8kg-mへ、エンジンは72馬力/11.7kg-mから77馬力/11.7kg-mへそれぞれスペックが変わった。システム全体としては、101馬力/42.9kg-mから111馬力/48.7kg-mに向上している。
燃費は10・15モードで35.5km/Lという数値(最高燃費グレード車)。
先進的なハイブリッドカーらしく各種のデバイスも充実。世界初採用の装備としては、EVドライブモード、インテリジェントパーキングアシスト、ステアリング協調車両安定性制御システム(S-VSC)などが挙げられる。
現在へと続く「HYBRID SYNERGY DRIVE」のコンセプトとエンブレムが採用されたのもこの2代目プリウスからだ。
2009年 3代目
これまで世界40以上の国と地域で発売されてきたプリウスだが、3代目ではその約倍となる80以上の国と地域で発売された。
2代目同様の3ドアハッチバックスタイルを採用したボディは、全長4460mm、全幅1745mmとさらに大型化した。全高は変わらずの1490mmだ。
なんといっても最大の目玉は進化したハイブリッドシステムで、エンジンは初代、2代目の1.5リッターから1.8リッターに排気量アップ。さらにリダクションギヤを組み合わせたTHS2を採用している。エンジンスペックは99馬力/14.5kg-m、モータースペックは82馬力/21.1kg-mというもの。システム全体としては136馬力に達している。
ドライブモードには、EVモードのほか、エコドライブモード、パワーモードを採用。先進装備の抜かりなく、現在では当たり前となったLEDのヘッドライトをロービームに装備した。また、ムーンルーフにソーラーバッテリーを搭載し、その電力で室内の換気を行うという、「ソーラーベンチレーションシステム」、スマートキーのスイッチで乗り込む前にエアコンの稼働ができる「りもーとエアコンシステム」も採用している。
燃費はさらに伸び、10・15モードで38.0km/L(燃費最高グレード)に達している。新燃費モードのJC08モードでは32.6km/Lだ。
また、2011年に行われたマイナーチェンジに合わせて、スポーツコンバージョン車シリーズの「G Sports(G’s)」が追加されたこともトピックだろう。
最新型4代目プリウスのスペック
トヨタのクルマ作りの構造改革「TNGA(Toyota New Global Architecture)に基づいたプラットフォームを採用した第1弾として誕生した。エンジンは3代目と同じ排気量の1.8リッターながらも最大熱効率は40%を達成。3代目の38.5%からさらに向上させた。
ハイブリッドシステムも見なおされ、ハイブリッドトランスアクスルやモーター、パワーコントロールユニットなどが、軽量かつ小型化している。バッテリーにはついにリチウムイオンが用いられ、駆動方式によってニッケル水素(E-Four)との使い分けがなされている。
リヤのサスペンションが3代目のトーションビームからダブルウイッシュボーンに変更となったことも注目点。路面追従性があがり、乗り心地と操縦安定性が追求されている。
また、E-Fourと呼ばれる4WDが追加となった。これはリヤを独立したモーターで駆動するシステムで、降雪地域に住む人がプリウスを選びやすくなっている。
ボディサイズは3代目に比べて全長が+80mmの4540mm、全幅が+15mmの1760mmとさらに拡大した。ただし全高に関しては初代から守ってきた1490mmから-20mmの1470mmと低くなり、ロー&ワイドなスタイリングとなっている(4WD車のE-Fourは全高1475mm)。
登場時、とくに年齢層が高い購入希望者にとって、少し奇抜すぎるといった意見が上がるなど賛否両論あったスタイリングだが、2018年のマイナーチェンジで大幅に変更された。とくに斬新で攻めたデザインであったヘッドライトやリヤコンビランプは、おとなしめの意匠に変わっている。また、全長は4575mmに延長された。加えてこのマイナーチェンジでは「繋がるクルマ」とも呼ばれるコネクテッドカー化しており、専用通信機のDCMを全車標準装備、T-Connectサービスが3年間無料で利用できる。
また、時代の流れに沿うように安全装備も充実。全車速追従可能なクルーズコントロールや、オートマチックハイビーム、車線逸脱の恐れがある際にステアリング操作をアシスとするレーンディパーチャーアラート、昼間の歩行者も検知するプリクラッシュセーフティ(自動ブレーキ)などがセットになったToyota Safety Senseが全車に標準装備されている。
気になる燃費だが、JC08モードでついに40km/Lを超える40.8km/Lを達成(燃費最高グレード)! E-Fourでも34km/Lに達するなど、究極のエコカーとして進化を遂げた。