ガルウイングのスーパーカーでも速さに重きを置いていないものも
3)光岡オロチ
オロチは小規模ながら日本で10番目の乗用車メーカーである光岡自動車が、各部パーツの供給などで大手自動車メーカーも協力を得ながら2006年にリリースした、ガルウイングドアを持つエンジン横置きミッドシップのスーパーカーである。
スーパーカーというジャンルやスタイルから速そうに見えるオロチだったが、実際にはまったく速くなかった。それもそのはずでパワートレインは当時のレクサスRX330(2代目ハリアーの輸出仕様)の3.3リッターV6+5速ATというスポーツ性はないものだったのに加え、オロチのコンセプトは「スタイルや雰囲気を楽しむ扱いやすいファッションスーパーカー」だったからだ。それでもコンセプトを理解して買ったユーザーの満足度は高かったに違いない。
4)9代目スカイラインの基準車
20世紀までのスカイラインに求められる重要な要素は「速さと運転する楽しさ」だった。そのイメージリーダーが8代目モデルで復活したGT-Rで、浮き沈みが激しかったスカイラインにおいて原点に返った8代目モデルでスカイラインは自分を取り戻した。
しかし次の9代目モデルは、8代目モデルが人気こそ絶大だったものの販売面では意外に売れなかった原因が4ドア車のリヤシートの狭さと分析したこともあり、ボディサイズを拡大。それでも主力となる直6エンジンの排気量が2リッターから2.5リッターに拡大される分で「スカイラインらしい速さは保たれるだろう」と思われていた。
だが登場した9代目スカイラインの基準車の2.5リッターターボはリニアチャージコンセプトという「ターボ車ながら扱いやすい」というコンセプトを持つもので、「確かに扱いやすいけど、ターボ車らしいパンチに欠ける」のも事実だった。
さらに悪いことに当時トヨタはマークⅡ3兄弟に8代目スカイラインの影響を受け2.5リッター直6ツインターボを搭載したスポーツモデルのツアラーVをラインアップしており、9代目スカイラインの基準車は質はともかくとして速さではツアラーVに完敗。古典的なスカイラインのイメージとはちょっと離れたクルマとなってしまった。
しかし9代目スカイラインはラゲッジスペース下からリヤシート下に移動された燃料タンクなどによる重量配分の配慮や、現代のターボエンジンに通じる前述したリニアチャージコンセプトなど、技術的に正しい進化をしたクルマだったのは今になるとちょっと皮肉にも感じる。
クルマはサーキットなどで競争しない限り「自分が乗って楽しい、満足できる」ことが最も重要な商品だ。それだけにスポーツ系のクルマを選ぶ際にも速さだけに目を向けず、自分に合ったクルマを選ぶことを強く勧める。