ボディサイズやミッションなど日本に適さない仕様になっている
理由その1は、欧州仕様の5代目マイクラはフランスにあるルノーの工場で生産されている。日本に逆輸入車として持ち込むには、アジアのタイからよりも、輸送コストがかかりすぎるのだ。コンパクトカーは価格命のところも大きく、これは痛い。
理由その2は、ボディサイズ。5代目マイクラは全長3999mm、全高1455mmはともかく、欧州のライバルに対抗するため、全幅が1743mmとなり(欧州Bセグメントのコンパクトカーとしては平均的)、日本では3気筒1リッターターボエンジン搭載にして、3ナンバーとなってしまうのだ。ノートが全長4100mm、全高1520mmとはいえ、全幅は5ナンバー枠に収まる1695mmだから、上位のノートとマーチの立場がある意味、逆転してしまうのである。これも痛い。
理由3として、さらに決定的なのは、欧州仕様のマイクラのミッションが6MTのみという点。国産コンパクトカーとしてMTをさりげなく用意するクルマはあっても、あくまでも主力はAT、CVT、あるいは2ペダルのセミATということを考えると、クラッチのある3ペダルのみの導入は論外だろう。
ちなみに3気筒1リッターターボエンジンはR35型GT-Rで採用したミラーボアコーディング技術を取り入れ、ピストンシリンダーの内壁を鏡面状に磨いてパワーと低燃費を両立した本格派で、タイヤサイズも205/45R17と攻めたサイズとなる。つまり、欧州で生き生きと走るための性能に重点を置いた!? コンパクトカーなのである。技術的な魅力はともかく、日本のコンパクトカーとしてはまず成立しない商品性ということだ。
理由4として挙げるとすれば、4代目マーチはアジアスペシャル、5代目マイクラは欧州スペシャルという、地域、国に最適化されたクルマである点も見逃せないポイントだ。日本で使うぶんには、やはり4代目のほうが適切と、日産は考えているのだろう。
とはいえ、正直に言って4代目マーチはあらゆる角度から見て、世界のコンパクトカーと比較しても見劣りしない、ずっと新しいヤリスやフィット、スイフトなどと対抗できるはずもなく、できれば5代目マイクラを2ペダルとし、ヴィッツ→ヤリスのように、マーチ→マイクラと名称変更して国内で生産するのが理想とも思える。走りについては未試乗なのでなんとも言えないが、マイクラはノート以上のカッコ良さと、マーチとは比べ物にならないほど充実した装備を持っていることは確かでもあるからだ。