クルマは注文に応じてカスタムが必要となり基本的には受注生産だ
工業製品というのは同じものを大量生産することでビジネスとして成立しているというイメージも強いが、こと自動車においては大量生産でありながら注文に応じて、トリムの仕様やボディカラーを選べるなど多品種少量生産といった一面もある。つまり、基本的には受注生産となるわけだ。
受注生産というのは、注文を受けてから生産するので、在庫を抱えてしまう必要もなく、材料などもトヨタの「ジャストインタイム方式」で必要なときに必要な量を供給するようにすれば無駄のない生産が可能になる。そんなわけで、受注生産というのは工業製品の作り方としては理想的といわれている。
受注生産の対義語が「見込み生産」だ。需要を予測して、その見込みに合わせて生産量を決めるというもので、在庫を抱えるというリスクはあるものの、市場に大量に供給できるので、リードタイム(発注から納品までの時間)を短くできるのがメリット。そして、商品の種類によってユーザーはリードタイムの期待値が異なる。
たとえばコンビニでパンを買おうというのであれば、店頭在庫がないからといって注文して待つなんてことはないだろう。違う店に行って買うだけだ。この場合のユーザーの期待するリードタイムは「その場に在庫がある」レベルである。
一方、乗用車においてはユーザーの考えるリードタイムは1カ月程度と言われている。自動車の場合、受注生産においても10日~14日がリードタイムといわれているので、見込み生産しておかなくともユーザーニーズは満たせるというのが定説だ。
しかし、自動車メーカーは大量の新車を保管していることがある。通常の車両置き場に置ききれず、臨時の場所を借りて同じ車種を大量に並べていたりする。それがSNSなどで話題になることもあるので、写真を目にしたことがある人も多いのではないだろうか。
受注生産が基本であるはずの乗用車において、なぜそうしたことが起きるのだろうか。