自然災害が多いいまクルマの選択も重要になる!
ジープ車の販売が好調だという。2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)で「ラングラー」がエモーショナル賞を受賞。それを受けて積極的な記事展開が繰り広げられたことも大きな要因となっているだろう。かく言う僕は「ラングラー」に10点満点を配したほど高く評価していた。その理由として「昨今増えている自然災害に対し生命を守る選択としての価値が高い」と評したのだ。
2020年はコロナで始まり、今も多くの困難に直面している。自然災害も猛威を振るっていて「令和2年7月豪雨」が九州各県や長野を中心とした中部、飛騨、岐阜県エリアを直撃し多くの犠牲を出している。
じつは今回試乗を行ったのはまさにこの豪雨の真っただなかで、試乗会場となった長野県白馬村も河川の増水や土砂崩れなどのリスクに晒されていた。ただ試乗会場として用意されたのは冬季スキー場となるゲレンデを利用した特設コースで、標高が高い場所。どちらかというと雨雲の上に位置するほどで、降雨には見舞われるものの滝のような洪水ほどではなく、ジープの走破性を試すには整備されたコースがむしろ絶好の条件となっていたのだ。
今回メインに試乗したのはジープラインアップのなかで最高クラスの走破性を誇る「ラングラー・ルビコン」だ。3.6リッターV6自然吸気エンジンに8速ATを組み合わせ、4輪駆動システムを持つ。「ルビコン」はベースモデルに対し悪路性能をより高く発揮するための専用装備を備えさせられていて、普段の使用では確かめることができないような極悪路が走行プログラムとして用意されていたのだ。
冬季はスキーゲレンデとなるものの、夏場は草が伸び、なかには人の背丈以上に伸びた雑草に覆われたゲレンデ。そこにモーグル路やジャンピングスポット、最大傾斜角31度にも及ぶ急勾配のコースが設定されていた。
まずは4ドアの5人乗りロングボディのルビコンに乗り込む。スタート地点は比較的緩やかな傾斜だが、砂利道で滑りやすい。
ラングラーの4輪駆動システムは「セレクトラックフルタイム4×4システム」と呼ばれる機構が採用されている。舗装路では後輪2輪駆動で走れるうえ、4Hモードでは高速での4輪駆動走行も可能にする。これはセンターコンソールのレバーを操作することで任意に選択でき、走行中の変更も可能となっている。
またセンターデフの配分を自動制御する4Hオートモードを備え、フルタイム4WDとしてあらゆる路面に自動的に対応することが可能だ。今回、東京からの移動を3.6リッター「サハラ」で行ったが、高速道路での直進安定性は4Hオートモードが最高の安定性とハンドリングバランスを示していた。
今回の試乗会場のような特殊路では4Lモードを選択する。ルビコンの4Lは最終減速比が4:1に設定されていて、ほかのラングラーモデルの2.72:1よりローギヤードに設定され差別化しているのだ。
ルビコンではさらに前後のデファレンシャルロック機構を備え、またフロントスウェイバーディスコネクトスイッチを装備していて「ロックトラックフルタイム4×4システム」としている。
スタート直後の砂利道は物ともしない。特別装備のマッドテレインタイヤの好特性もあり、FRの後輪2輪駆動状態でも登っていってしまえる。
頂上地点からは急勾配の泥濘路を降りる。ここではまず「ヒルディセント機能」が4輪のブレーキを個別に精密制御し緩やかに下り始める。シフトレバーをマニュアル操作ポジションにして前後に動かすと1〜8km/hの範囲で任意に速度設定ができるのが実用的だ。これだけ急な下りだと8km/hでも勢いがつき、テクニックがないと危険に感じるほど。
モーグル路で左右段差も大きくなる場面では「スウェイバーディスコネクト」スイッチを稼働。これはフロントサスペンションのアンチロールバーを機械的に切り離し、サスペンションストロークを大きくする機能で、悪路走破性を飛躍的に高める。数あるジープラインアップのなかで「ラングラー・ルビコン」だけが備える特別なメカニズムである。
こうした装備の動作や最大40度のハンドル切れ角、車体の前後や左右の傾斜角度などはセンターモニターに表示され、またフロントカメラが前方の死角を移し出すので見通しのきかない場面でも安心して進行できる。
これだけの装備を駆使すれば「道無き道」を進んで行けるほどの走破性を見せつける。