今はピストンの往復距離を長くしたロングストローク傾向
次に、レシプロエンジンはシリンダーのなかをピストンが往復運動をしているが、ピストンが往復する速度には限界がある。一般的に、秒速22~25mといわれる。これには、エンジンのなかでピストンがどれくらい移動しているかという距離が一つの条件として関わってくる。
1気筒500ccの場合、そのボア(シリンダー直径)×ストローク(ピストン移動距離)が同じスクエアと呼ばれる関係の場合、どちらも約86mmになる。たとえば、ピストンの平均速度を秒速22mとした場合、そのエンジン回転数の限界は約7600回転/分(rpm)と計算できる。市販量産車のエンジンとしては、高回転で回せるエンジンといえる。
ピストンの往復距離をさらに短くしていくと、もっと高回転で回せるようになる。しかし逆に、シリンダー直径が大きくなって、燃焼が悪化し、使った燃料を燃やしきれなくなる懸念も生じる。昔であれば、燃費がよくなくても高回転で回して出力を大きくする考えもあったが、現在は逆にピストンの往復距離を長くしたロングストローク傾向にし、シリンダー直径を小さくして燃料を燃やし尽くす考えのエンジンがほとんどだ。なおかつ出力が足りないときは、ターボチャージャーなどの過給機や、モーター駆動などを加えることで補っている。
1気筒500ccという排気量は、出力と損失の調和、あるいは気持ちよく高回転まで回せる味わいなど、気筒数で総排気量を調整しながら総合的に性能をまとめるうえで都合のいい排気量といえる。なおかつメーカーとしては、別の排気量での性能試験という手間をかけず、総排気量の異なるエンジンを量産できる利点も生まれる。それもある種の、経営上の効率化だ。