いまクロスオーバーSUVに乗る人のほとんどが街乗りメイン
今、話題沸騰の日産キックス。タイ生産のクロスオーバーモデルだが、なんと、パワーユニットはe-POWERのみ、駆動方式も、ジュークには4WDがあったものの、潔く2WDのみとかなり割り切った展開だ。じつは、車種整理が進む自動車業界において、日産としては、世界のトレンドでもある電動化の流れに加え、e-POWERとガソリン車がある車種の約7割がe-POWERで売れているというe-POWERの人気ぶり、販売実績を踏まえての展開ということだろう。
そして、2WDのみの設定は、実際、かつてのジュークを含め、クロスオーバーモデルに乗るユーザーのほとんどが街乗り専用車として使っている現実がある。街を走るクルマを見れば、かつてのミニバンだらけだった風景が、クロスオーバーSUVに塗り替えられているではないか。休日にはアウトドアを楽しみたい、とい要望があっても、そもそも日本国内のアウトドアシーンでは、道もフィールドも整備され、本格SUVでしか踏み込めないような場所は皆無と言っていい。
日産としては、どうしても悪路により強いタフな4WDが欲しければ、エクストレイルがありますよ、というわけだ。ただ、ユーザー側としては、まず使わない悪路走破性対応の4WD、より買いやすいガソリン車の用意があってもいいように思うが、最低地上高170mmからも分かるように(エクストレイルは200~205mm)、キックスの都会派クロスオーバーというキャラクターから、もしあっても、結果的に選ばれるのはe-POWERであり、2WDなのだろう。当然、駆動方式、パワーユニット、グレードを絞り込めば、コストも低減できるメリットが、メーカー側にはあるわけだ。
そうした、グレードを絞り込んだモデル展開は、国産車では今や常識になりつつある。かつてのホンダの基幹車種だった新型ホンダ・アコードはなんとe:HEV EXの1グレード。これは、セダン人気の有無の影響もあるだろうが、ある意味、直球勝負。「これが新時代のアコードです」というホンダの意気込みともとれる。グレード選びで悩まなくて済むメリットもあるかもしれない!?(レジェンドも1グレード!!)ちなみに、トヨタのハイブリッド専用セダンのカムリは5グレードあるんですけど……。
ちょっと事情が違うグレード構成がもったいない車種としては、ダイハツ・キャストが挙げられる。デビュー当時はスタイル、アクティバ、スポーツの3タイプが揃っていたのだが、現在はオシャレ派のスタイルのみになっている。クロスオーバーブームの今、アクティバがあればもっと売れるのに……と思うかもしれないが、じつは当時、アクティバはハスラーの対抗馬として存在した。そのハスラーに惨敗したため、姿を消すことになったと想像できる。が、代わりにハスラーを脅かすこと間違いなしのタフトが登場したのだから、まぁ、ダイハツとしてはグレードの整理は大正解。むしろ、すっきりしているように思える。