当時は時代がついてこなかった! 今なら完売必至のモデルも 2)S401 レガシィ初の「S」シリーズは、3代目レガシィセダン(初代B4)ベースで誕生。エンジンの高出力化やMTの6速化、ブレンボブレーキなど硬派な装備で武装しながら、STIの限定車としては初めて「プレミアムカー路線」に舵を切ったセッティングが施された。「走ることへの情熱を抱き続ける大人の感性に響く質の高い走り」と謳ったように、本質的には武闘派ではなく、上質で甘美なフィーリングが味わえたことが今も印象深い。SUBARU車が、走りの質においてかつてない高みに登りつつあることを感じさせた。
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しかしながら、2002年の時点でSTI車の「プレミアム路線」は時期尚早だった。当時のスバル ファンの多くはSTI車に「3年連続WRCマニュファクチャラーズチャンピオン車のDNA」、つまり競技マシン的硬派な味を求めていたのだ。
当時のSTI社長、「ミスターレガシィ」と呼ばれたSUBARU偉人のひとりである桂田勝さんは「400人にわかってもらえれば、それでいい」と語るも、残念ながらS401に共感して購入に至った人は400人に届かず、三百数十人しかいなかった。もしも今、このコンセプトで硬派な装備を施したレガシィB4が発売されたら、瞬時完売は間違いないだろう。時代の先を行きすぎたS401の高い志は、今こそ求められるのだが……。
3)エクシーガtS 3列シートを持つファミリーカーであるエクシーガに、ブレンボブレーキや18インチのポテンザRE050Aなどの硬派な装備を装着。当時のSUBARU車としては最重量級の1620kgという重さをあまり気にせずブレーキが踏み倒せるとあって、スポーツドライブ時の精神的限界が大幅に向上。7シーター車ながら、高次元な運動性能を満喫できたことが記憶に残っている。
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辰己英治さんをはじめとする当時のSTIの開発陣が、全座席の乗り心地を入念にテストして走りをチューニングした成果として、運転席と同じかそれ以上に3列目シートの居心地が秀逸であることがマニアの間で話題となったりもした。
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なかなかの力作だったが、限定の300台に届かず受注を終了。前年の2009年に発売された「エクシーガ2.0GT tuned by STI」は人気を博したものの、当時のエクシーガに高いスポーツ性を求める層は、まだ育っていなかったと推察。ちなみに、3代目フォレスターベースと、2代目XV(ハイブリッド)ベースの「tS」も限定台数に届かず受注期間を終えている。3列シート車やSUVに対しては、STIチューンドの限定車はあまり求められていなかった模様だが、この先は果たしてどうなるのか?