「車外放出」に「前席乗員を押しつぶす」可能性大! 死亡率10倍超のケースもある後席のシートベルト未装着の危険とは

その危険は他の乗員にも及ぶ!

 シートベルトの全席着用が義務化されてから12年(2008年6月1日)。しかし、いまだに後部座席の同乗者がシートベルトをしていないクルマをよく見かける。

 令和元年の警察庁とJAFの全国合同調査によると、後部座席同乗者の着用率は、一般道路で39.2%、高速道路等で74.1%でしかない。

 そもそも後席での着用が義務化されたことを知らないのか、後席なら未着用でもバレないと思っているのか、短距離だからいいと思っているのか、その理由はわからないが、後席のシートベルトの着用率は運転席・助手席に比べると著しく低い。

 道路交通法の「後部座席シートベルト装着義務違反」の罰則が、一般道では口頭注意(反則金なし、違反点数0点)で、高速道路でも違反点数=1点、反則金なしと比較的軽微な扱いなので軽く見られているというのもあるかもしれないが、その代償は意外に大きい。

 まず事故の起きたときの後席の同乗者の命が危ない。

 後部座席シートベルト非着用時の致死率(死傷者数に占める死者数の割合)は、

・高速道路で、着用時の約11.7倍

・一般道路で、着用時の約3.3倍

 さらに、後席のシートベルト非着用で事故で亡くなった方の内訳をみると、25.5%が車外に放出されており、66.7%が車内で全身を強く打って亡くなっている。

 JAFがダミー人形を使って行った、時速55kmでのフルラップ前面衝突試験では、シートベルトを着用していない後席ダミーの頭は、ヘッドレストを介して運転席ダミーの後頭部に衝突し、HIC(頭部傷害基準値)は2192をマーク。

 HICは2,000を超えると、死亡や重傷につながる致命的な頭部損傷を負う危険性が高くなるといわれているので、このケースではおそらく後席にいたシートベルト未着用の乗員は助からない……。

 そして注目すべきは、シートベルト未装着だった後席のダミーが衝突時に前方に投げ出され、運転席のヘッドレストに頭を打ち付け、さらにシートごと運転席ダミーを押しつぶしたこと。この結果、シートごと押しつぶされた運転席ダミーのHICも1171を記録。

 HICが1,000を超えると、頭蓋骨骨折など頭部に重大な損傷が発生するリスクがあるので、前席の人が被害を受ける可能性も見過ごせない(衝突の勢いで後席の人が前方に投げ出され、前席の人がシートとエアバッグで挟まれるのも危険)。

 このように後席のシートベルト未着用の危険性は、数字でもはっきりと出ている。「後席は大丈夫」といった根拠のない考えは改めて、違反の罰則の大小にかかわらず、自分と自分にとって大事な同乗者のために、ドライバーはもっと積極的に後席の同乗者にもシートベルトを着用するよう呼びかけよう。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

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