ロング客の帰りも距離が稼げるお客を捕まえられると理想的
ただ、残念ながら乗務員が狙うロング客(長距離利用)などは、乗務員が狙った通りに(ここならいそうだと流す場所を選らんだりすること)利用してもらえることはあまりない。いまどきはアプリ配車なども普及してきているが、“こんなところでなぜ?”というシチュエーションでロング客などの“上客”に遭遇するのもタクシー乗務員という仕事の面白いところなのである。
「深夜ですが、お客を降ろして、都心部なのに人気のない交差点で信号待ちをしていると、リヤドアのガラスを叩く音がしました。ドアを開けお客を乗せると『神奈川まで』と告げられ驚きました。私どもの業界では大変失礼ですが、このようなお客を“お化け”などと呼んでいます。しかも、発車してしばらく走らせていると『忘れ物をしたので乗った場所に戻ってほしい』と言われました」
「さらに目的地について帰る途中に多摩川を渡り都内に入ったとたんに、都心へ向かうというお客を乗せることができました。長距離のお客を乗せた帰りに、すでに明け方近かったですが、空車ではなくお客を乗せて都心に戻れるのは非常にラッキーでした。ただこのような流れは、こちらが狙ってもなかなか実現するものではありません。まさにこの仕事の醍醐味ですね」とは、かつてタクシー乗務員経験のあるA氏。
転職してきて、目を吊り上げて“稼ぐぞ”と乗務する乗務員は、経験を積んでもなかなか稼ぎが上がらなかったり、事故や乗客からのクレームが多いケースが目立つ。「過去を引きずったまま、闇雲にタクシーに乗務していてはやはり厳しいですね。過去は完全に捨てて、身も心もタクシー乗務員にならないと、コンスタントに稼ぐのは難しいです。“タクシーを街で流してお客を乗せるだけ”という簡単な仕事ではないのです」(前出A氏)。
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