運動性能を追求したMRとFF同様にコスト抑制のため誕生したRR
3)MR
MRレイアウトはというと、これは自動車工学が発達し運動性能の追求から生み出されたレイアウトだということがわかる。最初にMRを採用したのは1934年にフェルディナンド・ポルシェ(のちのポルシェ創立者)が設計したアウトウニオンというレーシングカーだった。
FRが主流だったレース界にMRを登場させ、それまでのレースカーとは一線を画す斬新なフォルムで大きな注目を集めるとともに優秀な成績を収めて現代のレーシングカーでもMRが常識となっている。
MRの定義は前後輪のアクスル間にエンジンやトランスミッションなど駆動システムを搭載していることだが、横置きエンジンや縦置きエンジン、フロントミッドシップ(日産GT-RやAMG-GT)などさまざまな方式が生み出されている。MRでは車体中央部分を駆動システムが占有するため十分なキャビンが確保できず、ふたり乗りスポーツカー用レイアウトとしてしか生き残る術がない。(一部軽トラックなどフロア下にMRを採用する例もある)
4)RR
RRレイアウトは、後輪アクスルより後ろにエンジンやトランスミッションを搭載している方式だ。丁度FFの前後を逆転したようなカタチだ。RRを最初に採用したのは独のVWビートルと言われている。アドルフ・ヒトラーがドイツ国民にも安価に手に入れられる大衆車を作るという構想のもと、フェルディナンド・ポルシェに開発を依頼。当時主流だった後輪駆動の後輪にエンジンとトランスミッションを搭載してしまえば安価に生産できるという現代のFF車と相通じる発想で生み出された。
駆動輪の後輪の上に重いエンジン/トランスミッションを搭載するため、駆動力が活かされ雪道でも発進が容易な利点が重宝されたのだ。現代ではポルシェ911がスポーツカーとして唯一のRRを継承している。
このように、さまざまな駆動方式のどれかひとつに絞れれば自動車メーカーもコストダウンができ、生産効率も利益率もあがる。だが、こうしたメリットやデメリットを車種ごとに使い分けなければ、走行事情に適した商品構成ができない。エンジニアの理想を追求する姿勢が、企業利益より優先された証として駆動方式の分化が促進され、より魅力あるクルマ作りが可能となっているのだ。