今でも大ブームのカテゴリーは1980年代に登場していた
2)トヨタ・カリーナED
ドイツ系ブランドでは一大ムーブメントとなっている「4ドアクーペ」。そのコンセプトもルーツを辿ると一台のトヨタ車に行きつきます。それが1985年に誕生した「カリーナED」。1.8リッタークラスの実用的かつスポーティセダンとして認知されていた「カリーナ」の派生モデルとして誕生した世界初の4ドアクーペといえるモデルです。EDは「エキサイティング ドレッシー」の頭文字をとったものです。後に「コロナEXiV(エクシヴ)」という兄弟車も誕生、空力に有利な低い車高を活かしてJTCCという4ドアセダンで競われたレースでも活躍しています。
Bピラーのないすっきりとしたグラスエリアは、ピラーレスハードトップと呼ばれるモデルに共通した魅力で、それ自体はカリーナEDの以前から採用しているモデルはありましたが、オーソドックスなセダンの派生モデルとして、こうしたスタイル重視のラインアップを追加するという商品企画については、間違いなく元祖といえるでしょう。時間差があるため「21世紀になってメルセデスやBMWなどから生まれた4ドアクーペに影響を与えていない」という見方もありますが、少なくとも日本では大ヒットしたモデルであり、海外メーカーがまったく知らずに偶然似たコンセプトになっただけというのはちょっと考えづらく、なんらか影響を与えていると考えるほうが妥当です。
3)ホンダ・ビート
最後の紹介するのは1991年に生まれた「ホンダ・ビート」。軽自動車のミッドシップ2シーター・オープンモデルです。ミッドシップであること、オープンであること、2シーターであること。この3つの要素を持つモデルは、海外のスポーツカー、スーパーカーなどでは珍しくありませんでしたが、ビートがエポックメーキングなのは「ミッドシップ+フルオープン+2シーターとして世界初のモノコックボディを採用」したということにあります。Bピラーでボディ左右がつながりリヤウインドウのあるミッドシップオープンではモノコックボディはありましたが、リヤウインドウのないフルオープンが可能な量産車としてはビートが世界初のモノコックボディだったのです。
技術トレンド的に軽くて量産性にも有利なモノコックボディに向かうのは当然の流れですから、ビートが登場しなくても世界中のミッドシップオープンカーはモノコックボディになっていたかもしれませんが、ビートが世界で初めて実現したのは事実です。
なお、現在ホンダが発売している軽ミッドシップ2シーター「S660」は、オープン時にBピラーやリヤウインドウが残るタイプでビートが世界で初めて実現したフルオープンという条件は満たしていなかったりするので、その意味では後継ではなく違うモデルと考えるべきなのかもしれません。