狙いや仕組みの差別化を図るために独自の名称をつけている
アウディのクワトロがブランド化したことにより、アウディは、アルミ車体を基とした軽量化を「ウルトラ(ウルトラライトウェイトを省略して)」と名付け、電動化を「e-tron(イー・トロン)」、情報通信を「コネクト」と、それぞれ名称をつけることにより、たとえ他社と同様の機能であっても、技術の優位性をブランド名として浸透させようとしている。これは、「技術による先進」という、アウディの企業メッセージにも通じる。
トヨタは、1997年に世界初のハイブリッド量産車であるプリウスを発売した。その後、いくつかのハイブリッド方式を量産化するなかで、2001年のエスティマ・ハイブリッドの導入に際し、E-Fourという名称を4輪駆動に与えた。これは、前輪駆動を基にしたハイブリッドシステムに、後輪用として別のモーターを取り付けることにより4輪駆動化し、エンジン車の4輪駆動とはとは別の方式であることを明らかにした。
以後、どのようなパワーユニットのクルマであっても、駆動輪ではない車輪側へモーターを取り付ければ4輪駆動にできることが広まった。たとえばホンダのNSXは、ミッドシップのため後輪駆動だが、前輪側へモーターを搭載することで4輪駆動としている。
クワトロにしても、E-Fourにしても、単に4輪駆動という機構であるだけでなく、新しい価値や仕組み、あるいは制御の仕方によって、4輪駆動の価値を高めたり幅を広げたりしたメーカーの狙いを明らかにするため、4輪駆動に名称をつけることを意識しだしたのだろう。