低すぎて安全装備が付けられないスポーツモデルも
軽自動車が主力のダイハツにとってロッキーは、ビーゴ以来の久しぶりの普通車、クロスオーバーSUVであり、ダウンサイザー、ダイハツ軽などの下からのアップサイザーを狙う超重要車種でもある。ゆえに、ライズとグレード同士を並べると、ライズにない、プレミアムという最上級グレードを用意している。一番下のグレードのLでも、ライズの下から2番目のX “S”グレードに相当し、ズバリ、ライズより頭ひとつ、高級!? 路線なのである。
一方、RAV4やハリアー、C-HRなどの人気SUV、クロスオーバーSUVを多種揃えるトヨタとしては、ライズを買いやすいエントリーSUVとして独自性を持たせ、「トヨタのSUVなのにこんなに安いの」と感じさせる必要がある。それで意図的に設定したのが、スマアシなしの自動ブレーキさえ付かない(OPでも選べない)167.9万円のXグレードだと思われる。実際にユーザーの手に届くのは174.5万円のXグレード以上のはずだが、販売戦略上、そういうことなのである。Xはセールスも薦めないだろうし、手を出すべきではないグレードだ。
ところで、軽自動車からHonda SENSINGを標準装備しているホンダの最高額車、スーパースポーツ、2420万円のNSXには、Honda SENSINGといった先進安全装備は未装備だ。「そんなに高価な高級車なのに、なぜ」と思うだろう。それには、付けたくても付けられない技術的な理由がある。全高1215mmの低全高ゆえ、自動ブレーキなどに必要なカメラやレーダーが、フロントウインドウ上部に付けても、低すぎて機能を発揮できないからだというのだ(発売当時の開発陣へのインタビューによる)。ルーフに角をはやしてカメラやレーダーを無理やり取り付ける方法もありそうだが、そんな不格好なスーパーカーなど、誰も欲しくないはずだ。
もちろん、自動車メーカーが先進安全装備を用意する以前に発売され、今でも継続生産されているクルマでは、先進安全装備が付いていないケースもごく稀にある(2010年発売、タイ生産の日産マーチなど)。後付けできる踏み間違い防止機能などと違い、先進安全装備の基本ともいえる自動ブレーキは、マイナーチェンジなどで簡単に追加できるような装備、機能ではないからだ。
これから新車(中古車も)を購入する際は、2021年の自動ブレーキ義務化を踏まえ、自動ブレーキはもちろん、日々、進化している先進安全装備が付いたクルマを、安心・安全のためにも選びたい。いや、付いているか、ではなく、どんな機能が付いているかまで確認する必要がある。それは自身、同乗者のためだけでなく、他車、歩行者や自転車搭乗者の安全にもつながり、事故を減らしてくれる効果が実証されているからでもある。
スバルのアイサイトの例では、アイサイト非搭載車に対して搭載車は、事故総件数で61%減、対車両事故で62%減、対歩行者事故49%減、追突事故に至っては84%減という驚きのデータもあるほどだ。先進安全装備が付いていないと、どれだけリスクが高まるか分かるだろう。もっとも、どんな先進安全装備が付いていても、事故をゼロにはできない。あくまで、先進安全装備を過信せず、安全運転が基本である。