課題は商品力ではなく社会の受け入れ態勢
反対の理由は、当然ながら工事に経費が掛かること、またその電力の支払いを明確にするためには、カード決済などを行える充電器の設置などが必要になり、コンセントの取り付けとは桁違いの費用になる。出費は抑えたいというのが大きな理由だ。
しかし、それをEVやPHEVの購入者が負担するといっても、「自分に関係ないことだから反対」と、感情的な理由で賛成しない事例があると聞く。そうなると、購入者は公共の設備で充電しなければならず、「ガソリンスタンドに立ち寄らずに済む」EVやPHEVの日常使いという、大きな利点の一つが活用できなくなる。
これに対し、メーカーやインポーターは、ことにPHEVの場合は、エンジンでのチャージ(充電)モードがあったり、ハイブリッド車としての燃費も十分に優れたりするので、自宅で充電できなくても満足できる性能だと説明する。だが消費者にしてみれば、買った品物の機能が一部使えないのであれば、わざわざ高い金額を払って購入しないだろう。
つまりそうした集合住宅の充電設備問題は、「買いたい」といってわざわざ店を訪ねた顧客を逃すことになっている。これは、クルマの良し悪しや、商品力の問題ではなく、社会の受け入れ態勢の課題であり、社会の認識が変わっていかなければ解決できない。自動車メーカーやインポーター各社が一致協力してキャンペーンを行うなど、対策を実行しなければ、日本は世界でもっとも遅れた交通社会となりかねない。
日本市場へのEVの導入に慎重なトヨタも、RAV4 PHVの人気をみた以上、将来的な電動化市場には、よいクルマを作るだけがメーカーの仕事ではないことに気付くべきだ。1997年の初代プリウス以来積み重ねてきた電動化技術があれば、EVをつくることができるのではなく、EVが売れる社会となることへの貢献が求められている。