夢のエンジンじゃない? 燃費とパワーを両立した「完璧」に思えるダウンサイジングターボの「限界」とは (1/2ページ)

燃費を向上しながらターボで出力を補う有難い技術

 ますます進むエンジンのダウンサイジング化。小排気量化により燃費を向上し、二酸化炭素排出量を減らしながら、出力はターボ過給で補う。この発想自体は古くからあったが、今日の大繁栄の契機をもたらしたのは欧州市場。2008年に5代目ゴルフの途中で追加された1.4リッターTSIエンジンは、非常に衝撃的だった。まだ珍しかった高効率デュアルクラッチミッションのDGSと組み合わされたこともあって、新世代パワートレインの誕生に胸が踊ったクルマ好きは多いはず。1.4リッターながらNAの2リッターに速さで遜色がなく、エコ走行をすると小排気量らしい低燃費を記録。実用的な性能面の完成度はすでに高く、これ以降、世界中のクルマがダウンサイジングターボ化を進める流れとなった。

 実用車はもちろん、フェラーリやポルシェなどのスーパースポーツ級もダウンサイジングターボ化されるにいたっている。Bセグの小型車では1リッター前後の3気筒が世界的なスタンダードに。高級車クラスも、小排気量ダウンサイジングターボ+ハイブリッドが主流になりつつある。燃費規制が自動車メーカーにとって深刻なレベルで厳しくなるなか、この流れはまだ続くことだろう。

 速くてエコなダウンサイジングターボエンジンがさらに進化し、普及することは、ユーザーにとって百利あって一害ナシ。あえて言えば、ポルシェ911は伝統の高性能グレード「911ターボ」以外のカレラ系もターボ化されているので名称がややこしい、という問題ぐらいのように思える。もちろん、そんな細事は無視できる程度のことだ。

 一人のクルマ好きとして、速さと環境を両立させられるダウンサイジングターボの存在はありがたい限りであり、文句を言えばバチが当たるというもの。今後もダウンサイジングターボ技術が磨かれることに期待してやまない。自動車テクノロジーの進化には、ただひたすら感謝するばかりだ。

 しかし、理性的にはそう思いながらも、クルマ好きの感覚としては、いまだ不満に思う点があるのも事実。ダウンサイジングターボは100%すべてが完璧で、従来型排気量のNA車や大排気量車はもうイラナイ、とはまったく思えないのもまた現実なのだ。


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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