ハスラーに燃費や機能が負けていても売れている
今は国内で新車として売られるクルマの37%前後が軽自動車だから、ニューモデルの投入も活発だ。ダイハツは2020年6月10日にタフトを発売して、1カ月後の受注台数が1万8000台に達したと発表した。
タフトは2019年12月に開催された「東京オートサロン2020」で、実車に近いコンセプトカーを披露している。このあと、販売店では2020年4月上旬から、来店客に資料を見せて予約受注を開始した。従って発売は6月10日でも、実質的な受注開始は4月に遡り、東京オートサロン2020の時点から購入を考えていたユーザーもいた。
また軽自動車の場合、1万8000台という発売後1カ月の受注台数は、さほど多くない。現時点で売れ行きが伸び悩む現行タントも、1カ月後の受注台数は3万7000台と発表された。現行ミライースも2万台を超えていた。
タフトの納期を販売店に尋ねると「7月中旬に契約して、納車は10月上旬。メーカーオプションの選び方次第では、10月下旬に遅れる可能性もある」という。
今は新車需要の約80%が乗り替えに基づくため、愛車の車検期間満了に合わせて新車を買うユーザーが増えた。納期が2カ月半以上に長引くと、納車を待つ間に下取りに出す愛車の車検期間が満了して、クルマを持たない状態が生じたりする。だから顧客を長々と待たせながら、受注台数を誇ることはできない。宣伝したいなら納車された届け出台数(小型/普通車は登録台数)にすべきだ。
タフトは長所と短所がハッキリしている。長所は価格の割に装備を充実させたことだ。価格のもっとも安いX(2WD/135万3000円)は、ライバル車のハスラーGを約1万円下まわるが、スカイフィールトップ、LEDヘッドライト、電動パーキングブレーキなどを標準装着する。これらはハスラーGには付かず、タフトXを選ぶ理由になり得る。価格の高い上級グレード同士を比べても、タフトは装備を充実させて買い得だ。
その代わりタフトは、ハスラーに基本的な機能で負けてしまう。ハスラーの後席は前後にスライドして、背もたれを前方に倒すと座面も連動して下がり、フラットで広い荷室になる。これらの機能はすべて左右独立式だ。しかしタフトの後席は座面が固定され、背もたれが単純に前側へ倒れるだけだ。
ハスラーは全車にマイルドハイブリッドを搭載して、2WDのWLTCモード燃費は、NAエンジンが25km/L、ターボは22.6km/Lだ。タフトは20.5km/L(NA)、20.2km/L(ターボ)にとどまる。タフトのターボが搭載するCVT(無段変速AT)は、ギヤ駆動を併用して効率を高め、ノーマルエンジンとほぼ同じ燃費数値を達成した。それでもハスラーには負ける。ハスラーのマイルドハイブリッド機能はアイドリングストップ後の再始動も受け持ち、ベルト駆動だから再始動音が小さい特徴もある。
4WDシステムは、ハスラーや生産を終えたダイハツ・キャスト アクティバでは、滑りやすい下り坂を安定して走破できる電子制御機能を備えている。タフトも悪路走破を考慮したが、ハスラーやキャストアクティバほど積極的な機能は備えていない。