専門外のアイテムなのになぜ? 自動車メーカーが新型コロナ対策の「フェイスシールド」を作れるワケ

トヨタは現在1日に約2000個を作るまでに!

 新型コロナの影響は自動車産業にも及び、操業停止にまで追い込まれてしまった。ラインを動かそうにも、中国製も含めて部品が入ってこないのでどうしようもなかった。その代わりに力が入れられたのが医療用品の生産だ。一番多かったのは、顔を覆うことによってウイルスを含んだ飛沫の付着を防止するフェイスシールドだろう。日本メーカーに限らず、世界的な傾向で、ランボルギーニのようなプレミアムブランドも手がけていた。

 世界中の自動車メーカーがこぞって同じものを作っていたのが気になるところ。もちろん医療関係者の需要に合わせてというのもあるが、やはり普段からの自動車開発・生産のノウハウを流用していた。

 とくに活躍したのが3Dプリンターで、これは生産ラインではなく、試作パーツを作る開発部門にあるものを使っているようだ。噴射する樹脂素材も同様。もちろん3Dプリンターに読み込ませるデータ作りはお手のものだろう。

 さらにマスクは、シートや内装を作るノウハウやスタッフを投入。先に紹介したランボルギーニのようなプレミアムブランドの場合、内装の質もこだわるため、社内で生産することが多く、マスクを作るのも問題はない。

 日本メーカーはというと、トヨタはYouTubeに生産の現場を紹介する動画をアップしているが、射出成形機で樹脂成形をしている。これは金型に対して、溶かした樹脂を噴射して一気に整形するもので、少しずつ形を作っていく3Dプリンターとは、生産能力は段違い。そもそもコストがかかる金型をわざわざ作っているのも驚きだが、そのおかげで当初は週に500個から600個(恐らく3Dプリンターで作っていた)だったのが、現在は1日に約2000個を作るまでになっているというから驚く。フェイスシールドは使い捨てていくものだけに、この生産量は頼もしいのひと言だ。

 ほかのメーカーも開発部門の少量生産に対応した設備も含めて投入し、同様に大量生産を行っている。たとえばマツダも射出成形を行なっていて、噴射する樹脂はバンパーと同じPPを使っているから、こちらもノウハウをうまく流用している。さらに日産ではフェイスシールドの生産はもちろんのこと、人工呼吸器などの生産技術支援まで行なうというから、日本の自動車産業、恐るべしだ。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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