トヨタは“仲間”とともに盤石の体制を築けたのが強みに
こうしたときにものを言うのが内部留保などの企業体力です。工場などの設備を維持するためのコスト、人件費はもちろん、アフターコロナの社会に向けてさまざまな研究開発を止めるわけにもいきません。内部留保が大きければいいのですが、「貧すれば鈍する」で思考停止になってしまうと、アフターコロナを生き残ることは難しくなります。
新型コロナウイルスの対策として「ソーシャルディスタンス」という言葉も広まりましたが、アフターコロナはパーソナルスペースを確保できるモビリティとして自動車の価値が高まることが予想されます。そうした未来に向けて、新しいニーズを満たす商品を生み出すことは、生き残るための道ですし、そのためには技術開発は必須です。
そうした点で、とくに心配なのはアライアンスを組む三菱自動車と日産の2社でしょう。日本の自動車メーカーとして、当期利益が赤字になってしまっているのは、この2社だけですし、日産に至っては営業利益さえも赤字になっています。もっとも、ルノーを含めたアライアンスとして次世代モデルについては「共同開発したモデルの外観を変えることで3社展開する」といったビジネスモデルを発表しています。
要は、軽自動車のデイズとeKがやっているようなフロントマスクによるモデルの差別化を、ルノー日産三菱自のアライアンスにおいてグローバルに拡大していくということです。効率よく魅力的な商品を開発しようという思惑どおりにいくのかどうか、アライアンス効果が上手く発揮できれば、企業体力は確保できますから、アフターコロナでの躍進が期待できるといえます。
一方、緩やかな「仲間作り」をしているトヨタは、その「仲間」であるマツダ、スバル、スズキの3社と合わせると世界販売台数は1600万台に迫るもので、コネクテッドなどスケール(規模)のメリットが大きい領域においては強みを発揮するであろうことは、決算の数字からも見て取れます。
なにしろ、これだけ厳しい決算ながら当期利益を2兆761億円と前年比10%増にまとめてきたトヨタですから、多方面に技術開発を進めているはずです。ウィズコロナでじっと耐え忍ぶなか、どこまで次世代の技術開発を進められるかは、アフターコロナで自動車市場が復活した際に、大きな差となって自動車メーカーの勝ち負けをはっきりさせることでしょう。