走りから使い勝手まで趣味を楽しむには最高の相棒
海へ向かうルートはいくつかあるが、ワインディングを通ることにした。走りはもちろん、カングーはじつに視界がいい。運転席から景色を堪能しつつ走りたくなったのだ。まずまずキツイ勾配の上りでさえも不足を感じないパワートレインを満喫しつつ、コーナーを抜けていく。途中、何カ所かのビューイングポイントに止まり、雄大な自然を楽しもうと思うが、ついつい眺めてしまうのはカングーだ。じつは途中、2台ほどのカングーとすれ違ったのだが、そのたびに不思議と愛着がわくデザインに感心し、またそんなカングーに自分が乗っていることを誇らしく思う。
さらにドライブに興じると目指す海に到着した。カングーから降り、カナヅチゆえに決して入ることのない海をぶらつく。「記事チェックしてほしいって、メール入ってますよ」、完全に休日モードに入っていた私に、同行した編集スタッフからの無粋な声。仕方なくカングーに戻ると後席でPCを広げてしばし現実に戻る。そう、カングーで出かけたくなる、もうひとつの大きな要因に「ゆとりのある安心感」があるのだ。後席にあるテーブル、天井に設けられた収納は、ドライブの疲れを癒すべく休憩するにも、仕事をするにも快適な空間であったりする。天井の高さは車内にいる圧迫感など微塵も感じさせない。もちろん、ラゲッジも居住スペースも広大な空間を誇っているので、「とりあえず全部もってっちゃうか」が可能だ。だからどこかへ行くことに勇気が必要ない。
仕事も一段落したあとは、せっかく海へ来たのだからと、お昼に海鮮を探す。あらかじめスマホで検索し、ナビを頼りにカングーで市街地を巡る。こうした走り方は見切りのいいクルマのほうが圧倒的にラクだ。安全の確保に使う神経が違う。
昼から贅沢に寿司を堪能したあとは、一番の目的である釣りをすべくカングーを走らせる。なぜ釣りか? 中途半端に数の多い私の趣味のなかでも、カングーとの相性がいいように感じられたのだ。スポットに到着し、準備を始めると、その考えが正解だったことがわかる。フラットでスクエアな荷室形状、大きく開く観音開きのバックドアからの荷物の出し入れの容易さ、そしてトノカバー兼荷物置きは道具の多い「釣り」という趣味を後押ししてくれる。
糸を垂れ、別段好きというだけで得意ではない釣りに興じると、もうまわりの声など聞こえないほどにオフモードになってしまった。とはいえ、耳元で「もう編集部に戻らないと!」とスタッフに言われれば帰らざるを得ない。後片付けをして再びカングーのステアリングを握る。朝ほどの元気がないことは確実だが、それでも運転が苦にならないのは、紛れもなく走りが楽しいからだ。
カングー、聞けばクルマと相性のいいアウトドア趣味に限らず、それこそインドア趣味も含めて、いわゆる「趣味人」からの人気が高いのだという。つまり生活に、遊びや豊かさを求める人がカングーに行きつくのだろう。丸一日カングーと過ごして、改めてカングーのもつ、主張しすぎない相棒感が実感できた。カングーのある生活はきっと楽しいのだろう。だが、私のような生来ののんびり屋にとって、仕事のパフォーマンス低下に直結する危険をはらんでいる。カングーとの生活はもう少し大人になってから、そう思った。