ついに本物の「ロードゴーイングF1」が誕生!
3)ヤマハ・OX-99-11
バブル期には、もうひとつロードゴーイングF1というべき商品企画が進んでいた。こちらはF1にエンジンを供給していたヤマハ発動機が主体となったもので、F1用V12型エンジン「OX-99」にちなんで「OX-99-11」という車名がつけられたスーパースポーツだった。
中身はフォーミュラのような形状のカーボンモノコックで、そこに個性的なボディカウルをかぶせたもので、ドアは跳ね上げ式が1つ付いているのみ。車名の最後が「11」となっているのは、おそらくタンデムの2名乗車パッケージとなっていることを示すものだが、現実的にはセンター配置されたシングルシーターといえるもので、まさしくロードゴーイングF1というべきプロジェクトだった。こちらもバブル崩壊によってプロジェクトは凍結され市販に至らなかったが、現在もヤマハ発動機には複数の車両が保存され、イベントなどで見ることができる。
4)ルノー・エスパスF1
ここまで日本におけるロードゴーイングF1的プロジェクトを紹介してきたが、フランス・ルノーの作った「エスパスF1」は、ほとんど遊び心だけで生まれたコンセプトカー。
エスパスというのは欧州初のミニバンで、その開発には米クライスラーの影響を受けている。実際の開発においては、いまはなき仏・自動車メーカー「マトラ」が中心的に関わっていた。そして、その商品企画をルノーが採用してエスパスが生まれたという経緯がある。このエスパスF1は、ルノーとマトラの提携10周年記念で作られたコンセプトカー。当時、ウィリアムズ・ルノーF1が積んでいたV10エンジンをミッドシップに搭載、車内には4脚のバケットシートが置かれていた。
当時のF1パイロット、アラン・プロスト氏によるテスト走行などプロモーションでは活躍したが、もとより完全に市販の意図はなかった。それでも史上最速のミニバンとして、いまも伝説となっている。
5)AMG・プロジェクトONE
最後に紹介するのは、現在進行形のF1エンジン搭載ハイパーカー。それがメルセデスAMGによって開発が進められている「ONE」だ。日本では2017年の東京モーターショーにおいて「プロジェクトONE」として発表されたハイパーカーは、F1譲りの1.6リッターV6エレクトリックターボエンジンとハイブリッドシステムによってシステム最高出力1000馬力を発生するというモンスターマシン。
その内訳は、リヤを駆動するV6エンジンとクランクシャフトに直結されたモーターによって約680馬力、フロントは左右それぞれに約160馬力のモーターが配され、前輪合計で320馬力を発生。すなわち、合計1000馬力のシステム最高出力になるというものだ。つまり、F1由来のエンジンは積んでいるが、パワートレインの構成としては完全に別物で、モーターレイアウトからするとホンダNSXに近いといえる。
とはいえ、3億円を超える価格となっており、完全に別世界の乗り物だ。本来であれば、すでにデリバリーされている予定だったが、新型コロナウイルスの影響によりプロジェクトに遅延が発生しているという。とはいえ、年内には世界のどこかでは公道デビューを果たすはずで、ついに本物の「ロードゴーイングF1」が誕生する日は間近に迫っている。