エンジン+モーター=「答え」じゃない! ハイブリッド車の「システム最高出力」の不思議 (3/3ページ)

走行状態によってベストな出力となるよう変動する

 パラレル式ハイブリッドの説明で、速度域によってモーターとエンジンを使い分けているという内容を書いたが、シリーズ・パラレル方式ではもっと複雑だ。

 仮にエンジンの出力を100としたときに、30でタイヤを直接駆動して70は発電をする。その一部を使ってモーターがタイヤを駆動、余った電力はバッテリーに溜めておくといった制御をしているのがシリーズ・パラレル方式なのだ。そして、この比率は状況に応じてリアルタイムに変化している。さらにエンジンで100の力を出すと同時に、バッテリーからも100の力を出すこともシステムの構造的には可能だったりする。

 そうであれば、エンジンとバッテリーの最高出力を合計すれば、車両として発生可能なシステム最高出力は計算できるが、外からは必ずしもそうした制御モードを持っているかどうかわからない。結論をいえば、メーカーが公表しているシステム最高出力の数値を見るしかなく、その内訳についてもメーカーが発表していない限り想像するしかない。

 たとえば、トヨタRAV4 PHVのシステム最高出力は306馬力(225kW)となっている。エンジンの最高出力は177馬力(130kW)、モーターの最高出力はフロントが182馬力(134kW)、リヤが54馬力(40kW)。この3つの出力を合計すると413馬力(304kW)だから、システム最高出力とのギャップは107馬力(79kW)になる。

 仮にエンジンが最高出力を発生している状態でモーター分を足しているとすると、306馬力(225kW)−177馬力(130kW)という計算になるから、モーターの出力分は129馬力(95kW)となり、前後モーターの能力からすると半分程度しか発揮していないことになる。また、この諸元から少なくともバッテリーがモーターを回すためのピークとしては182馬力(134kW)相当の電力を供給できることはわかる(必ずしも前後が同時に最高出力を発生するとは限らないため)。

 その数値を前提として、モーターが182馬力(134kW)出しているときに、エンジンの出力を足すカタチでシステム最高出力を発揮しているとすれば、そのときエンジンは124馬力(91kW)を発生していることになる。つまり、エンジン側からすると124馬力(91kW)~177馬力(130kW)、モーター側は129馬力(95kW)~182馬力(134kW)の範囲で動いているときに、車両としてのベストパフォーマンスを発揮している可能性がある。いずれにしても、ブラックボックスのなかの話で明確にはわからない。

 こうした理由から、シリーズ・パラレル式ハイブリッドのシステム最高出力は計算できない。わかるのはエンジンとモーターを合計した数字以上のシステム最高出力はあり得ないという一点だけだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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