エンジン+モーター=「答え」じゃない! ハイブリッド車の「システム最高出力」の不思議 (2/3ページ)

e-POWERはモーター駆動だけにシステム出力算出は簡単

 もうひとつ、「シリーズ方式」と呼ばれるハイブリッドシステムもある。その代表格は日産の「e-POWER」だ。仕組みとしては、エンジンは発電に徹し、駆動はモーターが担うというもの。そのため、車両として発揮できる最高出力や最大トルクはモーターのスペックを見るのが正解。諸元表にはエンジンの最高出力や最大トルクの数値も載っているが、車両のパフォーマンスとしては、そこに意味はない。

 ちなみに、デビューしたばかりのキックスでいうと、エンジンの最高出力は82馬力(60kW)、モーターの最高出力は129馬力(95kW)。外部充電はなく、ガソリンを入れてエンジンだけで出力を生み出しているはずなのに、エンジンの最高出力よりもパワーを出せる理由は、モーターを駆動する電力はバッテリーから供給されるからだ。

 バッテリーが129馬力(95kW)の出力を実現するだけの電力を供給しているため、諸元表のモーター最高出力は129馬力(95kW)となる。これは、ハイブリッドカーはじめ電動車両全般にいえることだが、車両としてのパフォーマンスを把握するにはバッテリーのスペックを知る必要があるのだ。ただし、バッテリーについては個数やアンペアなどは公表されていても、バッテリー出力のピーク値を公開しているケースはほとんどない。

 日産e-POWERでいうと同じモーターを使っていながら、モーター最高出力はノートが109馬力(80kW)、キックスが129馬力(95kW)、セレナとノートe-POWER NISMO Sが136馬力(100kW)と3パターンあるが、これらはバッテリーのピーク出力と、それをコントロールするインバーターの性能によって違いが生まれているといえる。

 このようにパラレル式ハイブリッドであれば、場合によってはモーターとエンジンの最高出力を足すことでシステム出力がわかる。シリーズ式ハイブリッドではモーターのスペックが車両としてのシステム出力を示すのだが、外野からはまったく計算できないのがトヨタに代表されるシリーズ・パラレル式ハイブリッドだ。ホンダの「e:HEV」もシリーズ・パラレル方式といえる内容で、同様に公表されている諸元からではシステム出力を得ることはできない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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