車種を減らしても商品力の優れたモデルを増やして欲しいところ
トヨタ以外は、どのメーカーもセダンを軽く見ている。以前はホンダがセダンに力を入れたが、シビックセダンとグレイスの終了が決まった。存続するのはインサイト、アコード、レジェンド、クラリティだ。
現行アコードは、日本では2020年に発売された新型車とされるが、北米では2017年から売られていた。新型は安全装備や衝突安全性を向上させたので、北米の新型投入から2020年初頭まで、日本では海外よりも安全性の劣るアコードを販売していたことになる。ホンダが日本のセダンユーザーをどのように考えているのか、現行アコードの発売の仕方を見れば想像できるだろう。
スバルはOEM車を除くと7車種を用意して、セダンはインプレッサG4、WRX、レガシィB4だ。車種数が少ない割にセダンに力を入れているが、レガシィはアウトバックを含めて、海外では2019年にフルモデルチェンジを受けた。アコードと同様、日本では旧型を売っており、次期レガシィB4が国内で扱われるかは未定だ。アウトバックのみになる可能性もある。
マツダはOEM車を除くと8車種を用意するが、セダンはマツダ3とマツダ6のみだ。マツダ6は大幅なマイナーチェンジを実施したが、SUVは4車種も用意している。セダンには力を入れていない。
日産はセダンの車種数が多いが、フーガとシーマは設計が古く、ティアナは終了した。シルフィも現行型の発売から7年以上を経て力が入らず(2019年の月販平均は約150台)、相応に取り組んでいるセダンはスカイラインだけだ。
以上のように各メーカーともセダンの開発では手を抜いており、売れ行きが下がって当然だ。このような状況でメルセデスベンツなどがセダンを積極的に開発する理由は、プレミアムブランドにとって大切な「安全と快適」を高めやすいからだ。
セダンはミニバンやSUVに比べると天井が低く、重心も下がる。後席とトランクスペースの間には隔壁があってボディ剛性は高めやすい。低重心と高剛性が、安全と快適の向上に結び付く。
そして今は、安全性が従来にも増して重視される時代になった。「運転の楽しさ、走る喜び」を宣伝しても見向きもされないが、安全と快適を効果的に訴求すれば、セダンが地道に売れる余地はある。セダンを「年寄りじみた古いカテゴリー」と諦めず、ラインアップは少なくて良いから、商品力の優れた車種を開発すべきだ。