日本の自動車市場をハイブリッドカー中心に変えたモデルも!
3)ホンダ・インサイト
トヨタ・プリウスが圧倒的に売れている時期があり、日本ではハイブリッドカーでなければ売れないといわれることもある。そんな日本の登録車市場において、初めて新車販売で月間トップとなったハイブリッドカーは、じつはプリウスではない。
ハイブリッドカーとして初めて登録車販売台数の第1位を獲得したのはホンダ・インサイト。それは2009年4月のことだった。
ホンダのハイブリッドカー専用モデルであるインサイトがオーソドックスな5ドアボディの2代目へとフルモデルチェンジしたのは2009年2月。ちょうどエコカー補助金といってハイブリッドカーの購入に10万円の補助が出るという制度を追い風に、この月1万481台も販売したのだった。ただしインサイトの好調は、まさに瞬間風速的であり、この後はプリウス(3代目)に販売の主役を奪われてしまうのだ……。
それでも1.3リッターのマイルドハイブリッドシステムを、空力に優れた専用5ナンバーボディに搭載したインサイトは、日本の自動車マーケットがハイブリッドカー中心にシフトするきっかけになったクルマとして自動車史に残る存在だ。
※参考リンク https://www.honda.co.jp/news/2009/4090511.html
4)三菱ランサーエボリューションIV
最後に紹介するのは、三菱自動車のラリーウェポン「ランサーエボリューションIV」。このモデルには、リヤタイヤ左右の駆動トルクをベクタリング(移動)することで旋回性能を高める「AYC(アクティブヨーコントロール)」が初搭載されていた。
いまではスポーツカーだけでなく、クロスオーバーSUVでも「トルクベクタリング」という言葉を多く見かけるようになったが、その考え方の元祖といえるのが1996年に誕生したランエボIVだったりするのだ。なにしろ、トルクベクタリングという用語が世界的に使われるようになったのは2006年ごろが最初といわれている。その10年以上前にトルクベクタリング(トルク移動)を可能にするAYCは市販車に実装されていたのである。
もっとも、世で言う多くの「トルクベクタリング」はブレーキの独立制御によって見かけの駆動トルクを制御するものであって、本当にエンジン・トランスミッションから伝わってきたトルクを、多板クラッチなどを用いて左右輪間でベクタリング(移動)させているAYCの制御に比べると、同じものと呼ぶには憚られる部分もあるが、それでもラリーフィールドで生まれたテクノロジーであるAYCが市販車に持ち込んだ「駆動力で曲がる」というアプローチは、数々のフォロワーを生み、いまでは当たり前のテクノロジーとなりつつある。