エンジンブレーキをかけるために採用されている
今や、100パーセント近いオートマチック比率。正確には約98パーセントぐらいなのだが、渋滞が多かったり、平均車速が低い日本だと、ATのほうがラクなのは確かだ。ちなみに免許の取得で見ると、MTとATの比率は約6対4となっている。ちょっと前まではMTには乗らないけど、とりあえず取っておくかということでMTがほとんどだったが、それも今や過去になりつつあるということだろう。
そんな全自動時代なのに、けっこう見かけるのがマニュアルモード(Mモード)だ。車種にもよるが、多くはシフトを横に倒してラインを変え、前後にコキコキとやると任意で変速できるというもの。また、シフトに手を伸ばさなくても、ステアリングのところにパドルが付いていて、前後に引いたり押したりすることで変速が可能なタイプも多い。
もちろん使わなくても普通に運転できるし、困ることもない。ではなぜ付いているのかというと、エンジンブレーキをかけるため。ATは多段化が進んでいるし、CVTはそもそも無断変速なので、下り坂ではエンジンブレーキがあまり利かないこともある。この対策として用意されている。
この点についてメーカーの開発者に聞くと「コストに制限もあるので全車種というわけにはいかないが、下り坂でブレーキだけに頼る仕組みは避けたいと考えているため、細かく変速できるマニュアルモードやパドルシフトを採用している。ただ、ほとんど使われていないとは思うが……」という。
さらに過去のATでも2速や1速(L表記なども)のモードはあったが大雑把で、エンジンブレーキが利きすぎて驚いたという声もある。
確かに、長い下り坂でブレーキを踏みっぱなしだったり、コーナーでパカパカと踏む人をよく見かける。クルマ好き、運転好きにしてみれば、Mモードを駆使してキビキビ走ればいいのにと思うし、ブレーキに頼りすぎるとフェードして利かなくなることもありうる。シフトのショックに驚くのはどうかと思うが、AT全盛時代というのはこういうことなのだろう。