コロナの影響を受けた4月は卸価格と小売り価格の差が広がっていた
今回は卸価格と小売り価格について、2020年2月~4月の全国平均を参考に、その差を計算してみることにする。まずは基本となるデータからピックアップしてみよう。
レギュラーガソリン卸価格の全国平均は次の通り(消費税抜き・1リッター)。なお、ここには、いわゆる「石油税」と「ガソリン税」が含まれている。
2020年2月:116.5円
2020年3月:106.1円
2020年4月:92.8円
新型コロナウイルスが世界中の経済活動に影響を及ぼし、2020年4月20日にはWTI原油先物が史上初のマイナス価格をつけたことは大きく報じられたが、石油製品の卸価格はそうした市場価格にリンクしているため4月は大きく値を下げている。
レギュラーガソリンのリッター当たり小売り価格(全国平均)はどのようになっているのだろうか。なお、こちらは消費税込みの価格で毎週発表されている。ここでは、各月の最終発表データをとることにする
2020年2月27日:148.5円
2020年3月30日:136.3円
2020年4月27日:129.0円
余談ながら、ガソリンには前述した「石油税」と「ガソリン税」の合計56.6円にさらに消費税がかかっているのは二重課税ではないかと指摘されることも多いが、ここではそうした議論をいったん忘れ、小売り価格の税抜き価格と卸価格の差を上記のデータを元に、各月ごとに計算してみることにしよう。
2020年2月:18.5円
2020年3月:17.8円
2020年4月:24.4円
なんとレギュラーガソリンの小売り価格が安くなった4月に、卸価格と小売り価格の差は大きくなっていた。つまりリッター当たりでみるガソリン販売の儲けは増えているのだった。
これは、市場が認めるガソリンの販売価格に対して、卸価格が大きく下落したという特殊事情によるものといえるが、いずれにしても通常月であればレギュラーガソリンの販売というのは1リッター当たり15円前後の利益しか見込めないビジネスであり、そこから固定費などを捻出することを考慮すると、多くのガソリンスタンドが厳しい経営状況にあるというのは理解できる。
まして、4月についてはリッター当たりの差額は大きくなっていても、自粛による外出機会の低減からガソリン消費量も減っていると考えられる。多少利幅が増えたとしても販売量自体が減っているのであれば、全体ではマイナスとなっているガソリンスタンドが大半のはずだ。
というわけで、ガソリンスタンドの小売り価格がころころと変わっている理由は、先物市場などに連動して卸価格が変動しているためである。そのため小売り価格が下がったからといって必ずしも利幅が減っているとは限らないが、だからといって濡れ手で粟の美味しいビジネスではないのも、また事実だ。