海外でのEVの導入も「ポジティブ」な理由ではない
これに対しEVやPHEVは、バッテリー搭載量が増えることで原価の上昇が起こり、採算に合わないとトヨタではみているようだ。海外を中心にEVを先に導入する計画も、寺師茂樹副社長が昨年の記者会見で「各国の法規制による反則金を支払うよりはまし」との答え方をしている。
また初代プリウスから使っているニッケル水素バッテリーは、採算が見込めているが、EVやPHEVに必要なリチウムイオンバッテリーはまだ経験が十分でなく、単にクルマとして使うだけでなく、EV後、PHEV後の再利用などについてトヨタは実証段階だ。ここが事業化できる見込みが立たなければ、EV後、PHEV後に、まだ60~70%の容量を残すとされるリチウムイオンバッテリーの新品時の原価はもちろん、再利用時の価値を見込む差し引きの原価計算も成り立たない。
さらに、EVやPHEVは、自宅などで充電することが基本だが、日本では集合住宅(マンションなど)の管理組合で合意を得なければ200Vの充電コンセントを設置できない課題があり、そのことに対しトヨタは手を打っていない。そしてトヨタは、HV技術があればEVやPHEVは作れると語るが、作れることと売れることは異なり、充電を含めEVやPHEVは、エンジン車やHVと違う販売戦略が不可欠であるにもかかわらず、そこに気付いていないかのようだ。
トヨタの販売店では、EVを持たないとほかのメーカーに移られてしまうとの危機感を持つが、国内に関してトヨタはEVやPHEVの導入に慎重なままだ。ようやくRAV4 PHVの導入を待つ程度にとどまっている。このままではトヨタは、EVとPHEVの販売で今後かなりの苦労をするのではないかと危惧される。