燃費と意匠性を両立する手段として採用された
エコカーのプリウスでは当然の選択と思えるが、スバルがスポーツ性の高さをウリにするレヴォーグに、燃費の改善を意識したフルエアロキャップを採用したのは意外だった。前期型の1.6GT/1.6GT EyeSightに装着された215/50R17サイズのアルミホイールは、空気抵抗低減に有効な形状のフルエアロキャップと組み合わせることにより、燃費と意匠性の向上をはかった。じつは、地味ながらレヴォーグの1.6GT系の隠れた入魂ポイントのひとつだったのだ。
残念ながら、レヴォーグの1.6GT系のフルエアロキャップ付きアルミホイールは、前期型のみの採用で終わっている。キャップを外した状態でもしっかりデザインされたアルミホイールが現れることもあり、キャップを外すユーザーが少なくなかったなど、評判はあまり芳しくなかったという。せっかくの試みも虚しく、後期型から採用されなくなった。しかし、ホイールのデザインにも空力特性の改善効果を求める流れは、おそらく今後も続くことだろう。
ちなみにスバルでは、戦前の航空機メーカー時代から空力開発に取り組んでいたこともあり、空力開発には独自のスタンスが見られる。群馬県太田市の本工場敷地内にある風洞実験施設では最新鋭化が進み、ムービングベルト方式と呼ばれる走行状態の車両各部の空力性能データの解析能力が向上。
市販車はもちろん、ニュルブルクリンク24時間レースやスーパーGT参戦車両にも活かされ、良好な結果をもたらしているが、開発のハイテク化が進む一方で、「空気の見える職人」の養成にも取り組んでいる。
航空機開発時代に実物大の木型の模型を作り、手作業で機体の空力開発を行っていたという伝統を、現代のクルマの開発に生かすという取り組みだ。若手のエンジニアが空力の本質を学び、開発スキルの向上にもつながっているという。空力試験結果のフィードバックプロセスの改善も得られているというので、今後のスバル車の空力性能に注目したい。