燃焼のタイミングでも音は変わる
そのほか、たとえばバイクのレース用エンジンで、ヤマハはクロスプレーンと呼ばれるクランクシャフトを採用したことがある。
一般的に、直列4気筒エンジンのクランクシャフトは、ピストンを支えるコンロッドの取り付け部(大端部)が気筒ごとに180度ずつズレており、これによってピストンの上下の動きは4気筒とも一致する。対してクロスプレーンは、90度ずらすことによって、例えば1番の気筒が燃焼したあと270度回転してから3番の気筒が燃焼し、次に180度回転したところで2番の気筒が燃焼して、その90度後に4番の気筒が燃焼するというように、燃焼の時期が一定でなくなる。これによって、通常であれば高周波的な透き通ったエンジン音であるのが、クロスプレーンではこもりのあるブーンというエンジン音になるといわれている。
なぜそのような不均等な燃焼をさせるのかというと、高回転でエンジンを回すバイクレースの場合、通常の180度クランクで燃焼をさせるとピストンの上下動と燃焼時期が一致するため、燃焼圧力だけでなくピストンの慣性力も働いて、出力調整を微妙にしにくくなるというのだ。その点、燃焼時期を不均等とすることにより、ピストンの上下動による慣性力を打ち消せるので、燃焼による力の変化だけをライダーがとらえられるのだという。
もちろん、普段我々がもっとも耳にしやすい音は、排気音で、これは排気音を鎮める役目を果たす消音器(マフラー)の影響を受け、マフラー内部の構成によって排気の周波数を調整することができ、ことにスポーツカーでは透き通った音色に調整されるが、その制御を行う開発者のやり方や好みによって排気音は違って聞こえるようになる。