軽自動車の装備は実用車として使うためのアイデアが満載
最新の軽自動車の便利装備は目を見張るものがある。たとえば、スズキ・スペーシアや日産ルークス、三菱ekスペースに用意される、室内全体の空気を循環させ、エアコンの冷風を後席にもまんべんなく届かせるリヤサーキュレーターや、多くの軽自動車に採用される、花粉症の人にうれしいティッシュボックス収納、豊富すぎる収納、スマホを置く場所にあるUSBコンセント。
さらには、子育て世代にうれしい、子供を後席に乗せる際に圧倒的な使いやすさを提案する、ダイハツ・タントの助手席側Bピラーレスのミラクルオープンドア、日産ルークスの運転席ロングスライド、ホンダN-BOXの車内でペットボトルを開けたときに、蓋を置いておけるボトルホルダーのそばに設置したくぼみ(実際には専用の小さなキーホルダーを置く場所だが)、日産デイズの助手席側ドア内張りの車検証入れ。
また、「そこまで装備するかっ!!」と言えるスズキ・ワゴンRやホンダN-WGNの傘置きスペース(ワゴンRはリヤドア、N-WGNは後席下)、さらには、限られた荷室スペースを拡大するための後席ロングスライド+後席を前方にスライドさせても段差や凹みができない可動ラップなど、軽自動車の装備はアイデア満載すぎるほどなのだ。
しかし、そんな軽自動車にある便利装備の多くは、意外にもコンパクトカー以上のクルマに用意されないことがほとんどだ。実際、コンパクトカー以上のクルマだと、サーキュレーターの装備などまずなく、ティッシュボックスをスマートに収納できる専用スペースがないことも多い。それこそ、スマホを置く場所に悩まされたりもするのだ。後席がスライドし、荷室の奥行を拡大できたとしても、三菱エクリプスクロスやVW T-CROSSのように、荷室フロアと前方スライドさせた後席の間に凹み=へこんだ隙間ができたりする。
軽自動車が、便利装備にこだわるのは、もちろん、国内専用車であり、日本の生活密着型のクルマだからだ。そう、毎日の足となり、女性が運転し、子供を乗せる機会も多く、ある意味、趣味性よりも道具としての便利さがより求められるクルマなのである。だから、車内のスタイリッシュさや整然としたレイアウト、生活感のなさなどは優先されない。あくまで、ユーザーの”わがまますぎる”使い勝手の要望に応え、満足度を高めることこそ、商品性の根源。目指すところなのである。
クルマ選びのポイントとして、走行性能、絶対的動力性能、室内デザインの高級感、見映え、洗練度などよりも、乗って使って便利かどうか、小物やバッグが置きやすいか、ティッシュが取り出しやすいか、子供を抱いた状態で乗り降りしやすいか、荷室をフレキシブルに使えて、ベビーカーなどの荷物を乗せやすいか……が重要なのである。