名前のGTは伊達じゃない! アチコチ行くのが苦じゃない
高速から一般道に降りたら、自然の景色を眺められるビュースポットに立ち寄ろうと、山を登るワインディングへ。この道路は急勾配の登り坂で、タイトなカーブが連続。路面が荒れたカーブでも、メガーヌ スポーツ ツアラーGTは水を得た魚のごとく、見事な足さばきとともに涼しい顔で走り抜けてみせる。フロントウインドウから視界に飛び込んでくる青空と真っ白な入道雲が初夏の訪れを感じさせた。
こうした場面は、クルマにとって厳しいシチュエーションのハズなのに、こうして鼻歌交じりで走れるだけの操縦安定性を発揮してみせることには、れっきとした理由がある。じつは、ハッチバックの「メガーヌ GT」と「メガーヌ スポーツ・ツアラー GT」のシャシーは、ルノーのモータースポーツ部門を手掛けるルノー・スポールのノウハウが注ぎ込まれているのだ。運動性能を高めたサスペンションやダンパー、アンチロールバー、ステアリングは専用装備されたもので、ブレーキのキャパシティも高められているという。スポーティに駆け抜けるシーンはもちろん、日常的な走行シーンから豊かな乗り味をもたらしてくれるもので、クルマは磨き上げると快適にも思い通りにも走れるのだということに気づかせてくれた。
景色を堪能したあとは、楽しみにしていたランチタイム。地元で採れた魚をいただける定食屋さんに入る。金目鯛にサゴチにメダイにヒラマサ、穴子など、新鮮な魚がもたらす甘みと旨味に舌鼓を打ったのでした。
食事のあとは再びドライブ。涼しげな場所を求めて夏場にはホタルが姿を現すという渓流沿いのスポットへ。のんびりと散策したあと、今度は海を目指してみる。こうして欲張りなほど色々な場所に行きたくなるのも、GT性能の高さゆえ。海辺にクルマを停めると、永遠と続く海岸線と砂浜の風景にブルー アイロン Mのボディカラーがニクいほどよく映える。
街にも、自然豊かな場所にも似合うメガーヌ スポーツ ツアラー GT。情熱を静かに滲ませるクールな佇まいである一方で、家族との移動や趣味に活躍するワゴンとして使いこなせる実用性。そこに、ルノーならではの走る楽しさを両立してみせた凄さをまざまざと見せつけてくれたモデルだった。
そんなメガーヌ スポーツ ツアラー GTは隠れた名車だと思う。豊かな気持ちで過ごせる日常と非日常。どちらも諦めないフランス人はやっぱり欲張りなんだなと思った。